剣の花嫁 山妖奇伝 / 夏目翠

本の感想, 作者名 な行夏目翠

身寄りのないマユリは亡くした兄の犯した「罪」を背負い、罪人として奴隷同然暮らしを送っていた。そんなある日、村を妖魔から守る代わりに、村が8年に一度<妖魔の村>に差し出す若い女としてマユリが選ばれる。<妖魔の村>に連れて行かれたマユリは、予想外の歓迎を受けた上に村の若者・クライの妻となることになるが、クライはマユリの過去に関係する人物だった。

C-Novelsの皮をかぶった少女小説……!(好きです)

デビュー作から「これはもう少女小説」って思ってしまった夏目さんの二作目。和風な世界を舞台に、妖魔が闊歩する地域で妖魔におびえて暮らす村出身のヒロインと、妖魔を倒す力を持った村の無口でぶっきらぼう系のヒーローがあれこれあって最後には、というお話。デビュー作からにじみ出ていた少女小説テイストが今回もまたいい具合ににじみ出ていてとても好物でした、ごちそうさま。

序盤のマユリのいじめられ具合と、それに起因するヒロインの後ろ向き加減が若干苦手(というか、読んでてうがーっとなる)ですが、これはきっとシンデレラ、先に待つのは明るい未来!と信じて読んでいたらあんまり気にならないくらい。マユリとクライの過去の接点と、マユリの兄の死の真相などがきれいにはまっていくところはなるほど、と。マユリとクライがそれぞれに抱えるものを互いに託して乗り越える展開などはやはりよいものです。

何点かもうちょっとだなぁと思うところもありますが、なにより「少し堅めの少女小説」なポジションがとても好物なのでそれだけで満足であります。「あの人」関係や、その他にもいろいろ疑問が残っているところがあるんですがシリーズ物で続いているので続きも張り切って読んでいきたいところです。次はクライの親友君のお話ということで楽しみです。

img剣の花嫁 山妖奇伝
夏目翠/萩谷香
C-Novels Fantasia(2009.06)
ISBN:978-4-12-501077-9
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