いちひめものがたり~姫の初恋~ / 智凪桜

本の感想, 作者名 た行智凪桜

戦で父を失った市は、遠縁の織田信長に義妹として織田家に迎え入れられる。信長の実妹・犬の朗らかな人柄もあり、織田家に馴染んでいく市は、同時に信長に恋心も抱きはじめる。信長もまた市への想いを募らせるが、その立場上市への想いを封印していた。信長への想いが届かないことに絶望した市は、謎の青年と出会い……

なかなか斬新な長政様でありました。

前作に引き続き、戦国の恋模様を描いた作品。今度は市と信長、そして浅井さんちの長政君の微妙な三角関係を描いた作品でした。なんとなく前回と立ち位置が似てる気がするんですが、些細なところは置いておいて、今回も前半戦(信長と市の秘めたる想い)の方がツボでした。自分の立場から想いを告げられない信長とか、養ってもらってるという負い目から自分の気持ちを告げられない市とかキュンキュンしました。
そして信長ターンの次は長政君ターン。この長政君は……斬新だな……。いや、私の長政像って、大河ドラマとかそこら辺でしかないのですが、何と言いますか、ワンコ系というかぱっと見アホ系というか。(よく言えば)できる人なんだけど天真爛漫系。市の心をつかむための数々の無駄な情熱、感服いたしました。もうただただすごいわこの人。おかげさまで悲恋になるかもしれないというある種の悲壮感は全く感じることなく、ああこれはいいラブだ、と安心して読めました。

imgいちひめものがたり~姫の初恋~
智凪桜/くまの柚子
小学館ルルル文庫(2010.12)
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