反逆の花嫁 / 鮎川はぎの
「聖剣の巫女」になるべく聖地に渡ったジークリンデだが、祖国でクーデターが起き、前王家の生き残りとして新王の息子ディーハルトの花嫁として祖国に連れ戻される。大切な人を救うために花嫁になる条件を受け入れたジークリンデだが、結婚までの間にディーハルトを出し抜く隙を虎視眈々と狙っていた。
わー、これはまた好みな腹黒×腹黒。
デビュー作から共通した世界を舞台した新作の読み切りは、腹黒×腹黒の行き詰まる攻防戦……とはまでは行きませんでしたが、わりに殺伐としたジークリンデとディーハルトの駆け引きが面白いお話でした。ふたりとも腹黒と言うより「計算高い」といったほうがしっくりきそうな、そんな頭脳戦。
殺伐としながらも、ふとした瞬間に「べ、べつに気になるわけじゃないんだから!」というジークリンデが可愛らしく、そして「利用している」といいつつもなんのかんのとジークリンデに気をくばるディーハルトさんのやりとりがツボでした。よい殺伐です。
ジークリンデにくっついてきてしまった考えなしの他国の巫女ニアちゃんのお陰でほんわり和みつつ、わりに容赦無くざっくりいってしまうところに、これもこの作者さんの持ち味だなぁと思いながら楽しく読みきりました。一冊でも綺麗にまとまっているんですが、2冊か3冊くらいかけてじっくりやっていただいても良かったなぁなどと、ちょっともったいない気もしました。
時系列としては既シリーズのなかで一番古いお話になり、既シリーズで出ていたあの人この人がいらっしゃるのも、他のお話を読んでいるとちょっとお得感がありますね。一人に関しては別に隠しも何もしてないんですが、ある人に関しては、え、あの人?と最後にびっくりしてしまいました。