悪魔は世界の救世主 / 神矢陽

本の感想, 作者名 か行神矢陽

報道部に所属する妄想暴走乙女の綾川奏が憧れの杉峰君に告白するという一世一代の大イベントは、奏と同時に杉峰に「契約」を申し出たセフィロトのせいでさんざんな結果になる。杉峰が世界を救うことができるという話をセフィロトから聞いた奏は、杉峰をヒーローに仕立て上げるためにその行動力を遺憾なく発揮するのだが……。


B’s-LOG文庫 第10回えんため大賞ガールズノベル部門奨励賞受賞作品。
人間界と「違う」世界を繋ぐ門がある高校で、妄想暴走系の報道部の女の子が憧れの王子様の後をしつこくストーク、ハイテンションで悪魔に協力、そしていつの間にか悪いことを企んでる天使を成敗してやる、なお話でした。登場人物紹介をよくよく吟味してみると立派に「逆ハー」状態なのに、あんまりそこら辺を気にさせないのはひとえにヒロインの暴走ぶりが貢献しているかと。各種取りそろえられてるんですがねぇ……おかしい。
とにもかくにも「勢い」がすごくある作品で(原因の大半は行動力に溢れまくってるヒロインのせいでしょうが)、いつの間にかクライマックスでいつの間にかエンディングでした。なんかすごい。個人的には苦手なタイプのヒロインだけど素直に賞賛したいです。
ヒロインと反比例してヒロインの王子様は非常にクールで、時折差し挟まれるつっこみはちょっと楽しかったりしましたが……、これ、邪念なく読んでも報道部部長が正ヒーローみたいですねぇ。部長は男も惚れるみんなのアニキみたいな人ですから。

高校という狭い世界を舞台に繰り広げられる世界をかけた戦い(?)の、スケールが大きいんだか小さいんだかよくわからない微妙さも何となく好きかもしれません。まだまだいろいろ続きそうですが、果たして奏の恋はどちらに向かうのか。ノリと勢いですごいところまで行ってしまいそうです。

img悪魔は世界の救世主
神矢陽/甘塩コメコ
B’s-LOG文庫(2008.05)
ISBN:978-4-7577-4252-9
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