楽園のとなり / 河上朔

本の感想, 作者名 か行河上朔

王立騎士団への入団試験は合格間違いなし、といわれて試験自体を三年連続受けられなかったカンナは、四度目の試験を目前に控えていた。今年こそは試験を受けるとやっかいごとには極力かかわらないことにかかわるまいとするが、道ばたで行き倒れていた謎の少年・シンクを拾ってしまう。

前向き×後ろ向き

WWの河上さん書き下ろしの新作。今度は主人公の年齢がぐぐっとさがって、がんばってるのについてない女の子が謎に満ちた男の子を拾ってしまったが故にまたしてもトラブルに巻き込まれ、入団試験を受けられるか否かっ!(結果は読んでのお楽しみ)というお話。

カナンの前向きさは、気持ちのいい前向きさ。今までの不運な出来事を吹き飛ばそうというところもあるんでしょうが、腐ることなく努力を続けて、周囲の人に支えられささえて進んでいこうとする姿勢が格好良かったです。対するシンクは序盤から後ろ向きだわ暗いわ疑惑がありすぎるわで「That’s影のある男の子」の見本のような子ですが(しかも、腕っ節はからっきり)、中盤以降の彼の行動には、カンナの影響が大きいな、と。ヘタレだけど格好良かった。

個人的には、団長が好きです。あと、シンクを牽制するラキ君も好きです。
突きつけられる現実は厳しいけれど、でも核にある「やさしさ」がとても心地の良いお話でした。

img楽園のとなり Adversity makes a man wise.
河上朔/あき
イーストプレス レガロ(2011.02)
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