ブラッディ・ハニー / 鮎川はぎの

本の感想, 作者名 あ行鮎川はぎの

一流女優を夢見るド貧乏な新人女優ロッテシアの次の仕事は、話題の新作への出演なのだが役名は「死体」。一流の死体を演じるために、作品の舞台となる町に出向いたロッテシアだが、滞在費を安く済ませようとして演じた「天涯孤独の少女」という設定が災いし、その町から十七年に一度供されるという生贄にされてしまう。そして、生贄となったロッテシアの前に現れたのは、「吸血が苦手」な吸血一族のサーディ。一族から逃げ出したいというサーディと、ロッテシアのある思惑が合致し、ロッテシアはサーディを連れて都に戻ることにする。

ヒロインの信条が「女は度胸、時々打算」という非常に清々しいものでした。

鮎川さんの新作で読み切り(ラスト周辺まで読み切りって気付かなかったですすいません)、前作(グリセルダ学院シリーズ)から十ウン年後のお話でした。グリセルダに登場したあの人この人ががっつり登場し(最初はまさかこの二人が!と思ったけど、数行でまさかねーというオチでした)、その一人の年齢が「三十ウン歳」なので間違いないかと(笑)。
非常に強くたくましい女の子と、天然タラシの吸血鬼(ただし血は吸わない)という青年の組み合わせで、今までと違ったコンビのおかげか話の展開が非常に早かったです。かなり「ピュアじゃない(どちらかと言わなくても邪悪なほう)」な女の子が、ピュアな青年のストレートな言動に触れるうちにストンと恋に落ちてしまう様子がなかなか良いものでした。

ライバル役の彼の落とし方はそれでいいのか!と思わず突っ込みたくなってしまいましたが(このあたりは、前後編くらいでケリつけたほうがよかったかも……)ロッテシアとサーディのどこかずれたやり取りが面白かったし、まあいいか!

imgブラッディ・ハニー
鮎川はぎの/凪かすみ
小学館ルルル文庫(2011.12)
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