伯爵と妖精 恋よりもおだやかに見つめて / 谷瑞恵
妖精国から無事帰還したリディアとエドガーだが、エドガーは公爵家からさらわれてから現在までの記憶を失ってしまっていた。エドガーの「友人」として一緒に旅をしているという設定で、通りすがりの客船に助けられたリディアたちだが、その客船が妖精の世界との狭間を行き来するというトラブルに巻き込まれてしまう。
エドガーがただの口説き魔……(通常営業です)。
本編の前巻から直接続いている書き下ろしを含めた番外編集。本編直後のタイトル作品にリディアとエドガーの結婚直後を描いた中編、リディアの両親と小リディアの短編の三作収録。
番外編なので重たい話はなく、相変わらずの「ラブっぷり」をお気軽に楽しめる一冊でした。「アシェンバード伯爵」としての記憶を失っているエドガーは、なんというか、普通に口説き魔に逆戻り(笑)。初期の頃のちょっとした緊張感と、巻を経て磨きぬかれたレイヴンやニコの冴え渡るツッコミが面白いお話でもありました。記憶を失っても残る「想い」が切なく、そして愛おしいお話だったなぁ……ということで、掲題作は良いものでした。
掲題作以外の二作ももちろんとても面白かったのですが、個人的にはちびリディアが!かわいくて!ニコさんの昔からのニコさんぶりもほんわかしながら見守れるような、そんなちょっと一息のお話。