婚約者の引継ぎ書 / 斉藤百伽

本の感想, お気に入り, 作者名 さ行斉藤百伽

親が負った借金を肩代わりしてもらうかわりに、富豪の息子で歩く迷惑・バートと婚約したクレアは、20歳までに肩代わりしてもらった借金を全額返済すれば婚約を解消するという約束を果たし、無事婚約の解消にこぎつける。バートから次のバートの婚約者候補に会うための隣国への旅行に誘われたクレアは、珍妙なバートの婚約者としてのノウハウを記した「引継ぎ書」を次の婚約者に渡すためにその誘いに乗る。

これはよいラブコメでした。

「ルルル文庫」らしい読み切りのラブコメ。しっかりもののクレアと、何を考えているかよくわからないバートが「無事婚約を解消する」までの物語だったんですが……もうこれ、期待通りのニヤニヤラブコメで、終始緩まる頬を引き締めるのに大変な一冊でした。この人の本、外で読めないカテゴリーに分類しよう……。

さて、物語ですが。へらへらと薄い愛の言葉を囁いてくる変わり者の幼馴染と無事婚約を解消できて晴れやかな気分での旅行かと思えば、なぜかクレアが「狙われ」ている。バートとその珍妙な従者の力で何とか逃走し、さらになぜか美人姉妹の道連れまで引き連れての珍道中になって……と予想していたものより風呂敷が大きい物語で楽しかったです。
バートが「変わり者」になっている理由や、クレアが徐々にバートの真意に気づき出す所など、少女小説的にも美味しい展開てんこ盛りで本当に楽しいお話だったなぁ。従者もいろいろ美味しいし、ミューちゃんのオンとオフの切り替わりもよいものだったし、いろいろツボにはまった一冊でした!

婚約者の引継ぎ書
斉藤百伽/椎名咲月
小学館ルルル文庫(2012.12)
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