風の王国 暁の歌 / 毛利志生子

本の感想, 作者名 ま行毛利志生子

ネパールから吐蕃にようやく帰ってきた翠蘭は、落ち着くことなくリジムの葬式とラサに建立された寺院の法要の準備に忙殺される。同時期にガルが主導する軍の再編計画と、ラセルの即位の準備も重なり、それらを快く思わない者達がさらなる事件を引き起こしてしまう。

9年越しの物語の最後の一冊、相変わらず面白かったです。

最初は正統派少女小説だったのに、ダンナさんが途中で退場、そのあとはヒロイン・翠蘭の波瀾万丈諸国漫遊記の体を呈しながら9年間27冊続いたシリーズの最終巻。淡々と事件が綴られる部分が大きい物語でもあるのですが、非常に読みやすく、そしてどうやって解決するのかなぁというところが非常に気になってすいすい読み進めてしまう、そんなシリーズでしたが最後まで面白かった!です。
今回はついに歴史の教科書なんかによく出てくる「吐蕃に嫁いだ文成公主がラサに寺院を建立した」というところにようやくたどり着き、ラセルの成長、最後までトラブルに巻き込まれる翠蘭、そして代替わりと最後の最後までぎゅっっといろいろ詰まった物語でした。翠蘭の「人たらし」ぶりは最後の最後まで健在で、なんのかんのとたらされるガルを読んでいて微笑ましく思ってしまった次第で(微笑ましい場面じゃないんでけど)。

悪役が相変わらず残念すぎて拍子抜けで、翠蘭を始めとして「味方」のみんながすごすぎるので小物感が余計に強調されてしまうのかなぁいやでもこの話は悪役を楽しむ話じゃなくて、翠嵐の人たらしぶりを楽しむ作品ですし!と最後まで翠蘭がかっこいいお話でした。最近、少女小説でここまでの長編シリーズがあんまりないので、これが終わってしまうとちょっとさみしいです。が、新作も楽しみにしております。

風の王国 暁の歌
毛利志生子/増田メグミ
集英社コバルト文庫(2013.09)
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