シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱 / 高殿円

本の感想, 作者名 た行高殿円

ロンドンオリンピックにわくイギリスにアフガンから帰ってきた元軍医のジョーは、手持ちのお金も尽きかけ路頭に迷う一歩手前で、友人からロンドンの一等地のフラットのシェア相手を探しているというシャーリー・ホームズを紹介される。しかし、シャーリーとジョーの最初の出会いは、フラットではなく病院の遺体安置所だった。

SFで百合なホームズ……面白かったです。

時代は百合ホームズだ!と高殿さんが勢いで書いてしまわれたという現代シャーロックホームズ(ただし登場人物はだいたい男女逆)、大層面白かったです。ノリと勢いで作られた同人誌を読んで(こちらは本書の巻末に再録されています)、ミスマガで連載された前篇を読んでいたんですが、ミスマガのその後の連載はうかうかしていたらミスマガが売り切れてしまっていたというオチでした……やっぱり、アウェイは難しい。

それはともかく、シャーリー・ホームズです。ただの「性別逆転ホームズ」じゃなくて、SFです。シャーリーは人工心臓の持ち主でハドソン夫人は電子脳で、攻殻機○隊のごとく電脳世界で情報収集(笑)。人工心臓だったらそんなに激しいアクションはないのかと思えば、山場ではロンドンの街を(テムズ川を含めて)縦横無尽に駆けずり回り、犯人にチェックメイトとクライマックスもすごく楽しかったです。一方のジョーは、ツッコミ体質というか、いろいろ規格外のシャーリーを一般人目線で突っ込んでくれるのでそれが面白く、ただの元軍医かと思えばなんだかすごい過去もお持ちのようで……これは続きも読みたいなぁ。読みたいといえば、ジョーの小遣い稼ぎの小説ですごい売れたらしい「ペシャワールでつかまえて」もものすごいあらすじだったのでちょっと気になる(笑)。

高殿さんの現代もの程ではないのですが、読みながら若干心に刺さるところもあったものの、SFと言うか非現実な物語なのでそれほど刺さることもなく、なんといいますか、非現実な話のほうが没頭できていいかもしれない、と思ったことも記しておこうと思います。現代日本モノも好きなんですけどね、たまに読んでて辛い。

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱
高殿円/雪広うたこ
早川書房(2014.07)
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