伯爵と妖精 紳士の射止めかた教えます / 谷瑞恵

本の感想, 作者名 た行谷瑞恵

ある日、伯爵邸の前に「あなたの子どもです」というメモと共に赤ちゃんの入った籠が置かれていた。あのエドガーなら隠し子もあり得るとあきれるリディアだが、その赤ちゃんはリディアのことを母親だと慕ってくる。


ナイチンゲールの恋の指南を受けざるを得ない状況に陥り、いつものリディアでは考えられないくらい積極的に行動を起こす掲題作「紳士の射止めかた教えます」、あらすじに書いたコウノトリの精の赤ちゃんティルのかわいさにくらくらしてしまう「コウノトリのお気に召すまま」のコバルト本誌に掲載された短編2作に、カールトン教授とその奥さんのナレソメを描いた書き下ろし中編「学者と妖精 この世の果ての島」の全3作収録。

短編は本誌掲載時に読んでいたんですが、何回読んでも面白いですね。特にティルはかわいくてすばらしい。ナチュラルに父親役を楽しんでいるエドガーとティルのコンビが好きだなぁ。
そして、今回の見所は、なんといってもカールトン教授の若かりし頃の物語でしょうかね。若いときからそこはかとなくトホホな雰囲気を醸しだし(つつも、やるときはやります……が詰めが甘い)、昔から教授は教授なんだなぁと思わず和みそうになりましたが、今後の物語の鍵となりそうな場面もチラホラとあり、見過ごせません。母のアレが青騎士伯爵とつながっているんじゃないかなぁなんて妄想してみたり。
物語の前後にはさまれる父から見た婿殿(予定)の観察日記、そして着実に「お友だち」から「親友」へステップアップしているらしいニコとレイヴンの和むやり取りに思わず笑ってしまいました。レイヴンとニコが二人で何を話しているのか(会話が成立しているのか)というところが若干気になるところではありますが。

続きも楽しみです。

img伯爵と妖精 紳士の射止めかた教えます
谷瑞恵/高星麻子(イラスト)
集英社コバルト文庫(2007.10)
ISBN:978-4-08-601076-4
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