悪食令嬢の贅沢な恋 王太子殿下の美味しい毒味役 / 瀬川月菜

本の感想, 作者名 さ行瀬川月菜

常に空腹を抱え、毒も薬も効かずありとあらゆるもの(食べ物以外も含む)を食べるても満たされることのない地方の伯爵令嬢リヴィアは、王宮に勤める姉の誘いを受け王太子シオンの毒見役として出仕することになる。親しい人から毒殺されそうになったことから食事ができなくなったシオンだが、リヴィアの食に対する執念と前向きさから徐々に本来の性質を取り戻していった。

思ってたより悪食で、ヒロインそれでいいのかと思いながら読んでました(ほめています)

普通の人生を送るのは無理とある種のあきらめとともに力強く生きているなんでも食べるヒロイン(壁まで食べるヒロイン、斬新だ)と、ヒロインの生命力に当てられて闇の世界から脱却していく王子様の物語でした。ラブストーリーではあるんですが、リヴィアの生命力が強すぎてロマンチックさが……な、ないぞ……?いざとなったら壁とか机とか馬車とか食べるしなこの子……という突っ込みが心の中で止まらず……(面白かったです)。ロマンチックなところは脇キャラのお姉ちゃんたちが見えないところでたぶん補完してた。

力強いヒロインに押されて後ろ向きだった王子様が光を取り戻していく、というある種の王道の展開ではありますが、この「なんでも食べる」というところが一歩間違えば大惨事(コメディ的に)となりそうなところ、中盤以降の王子様のスマートなアプローチで何とか大惨事へのルート回避し、さらにはちゃんとラブ的にも進んでる!という絶妙なバランスが良かったです。ロマンチックさは腹の虫とかが台無しにしてたんですけど、そこはこの物語の味なので……。

悪食令嬢の贅沢な恋 王太子殿下の美味しい毒味役
瀬川月菜/すがはら竜
一迅社文庫アイリス(2019.10)
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