煌夜祭 / 多崎礼

本の感想, 作者名 た行多崎礼

冬至の夜、島主の館に語り部が集まり夜を通じて話をするという祭・煌夜祭。廃墟と化した島主の館にやってきた二人の語り部が語りあうのは人と魔物の悲しい物語だった。


かなり今更ですが、昨年のC-Novles大賞作品を読みました。たしかに、これは大賞作品だなぁと思わず納得してしまうほどの素晴らしい作品でした。

とりあえず、何かを書いたら則ネタバレみたいな感想しか書けそうにないのでさらりといこうと思います。本編は語り部達が語る物語の短編集の様相を呈していますが、実は全てが一本につながる長編物語。人々に恐れられる魔物とは……ということが徐々に明らかになっていきます。
ひとつひとつの物語も十分独立して楽しむことができますが、それらがひとつの物語を構成していることに何となく気付き始める中盤以降がすごく面白い。あちこちに「ああ、これは伏線だったのか」と思わせる仕掛けが隠されていて、それに気付くと二度おいしいです。そして、ラストの二人の語り部のやり取りなんてもうここまで読んできた読者は総じて感動せずにはいられないのではあるまいか、というよかったねぇ感に溢れています。

なんとなくもの悲しい雰囲気に包まれてはいるものの、この物語に登場する人物たちが自分の大切な人たちのために必死に生きている姿はとてもかっこいいです。特に、終盤の主人公のクォルンなどはかっこいいとしかいいようがなくてかなりお気に入りです。

しかし、この本の表紙。読むまでまじまじと見たことがなかったので「仮面かぶった変な人(失礼)が馬かなんかのって疾走してる」というイラストに見えていたのですが、「語り部さんが座って物語りをしてる」イラストなんですね。大変失礼致しました。

img煌夜祭
多崎礼/山本ヤマト(イラスト)
ISBN:4-12-500948-1
中央公論新社 C-Novels Fantasia(2006.07)
bk1/amazon