レーエンデ国物語 / 多崎礼

本の感想, お気に入り, 作者名 た行多崎礼

聖イジョルニ帝国シュライヴァ州の首長の弟で騎士団の団長を務めるヘクトルとその娘ユリアは、ヘクトルの昔の戦友を訪ねるために大アーレス山脈を越えたその先にあるレーエンデにあるマルティンを訪ねる。シュライヴァからレーエンデに向かうためには難所を越えなければならない状況の中、レーエンデへの交易路の建設を計画するヘクトルは道案内役の元傭兵のトリスタンとともにレーエンデの調査を始める。

おもしろかった!

冒険、陰謀、異文化交流、英雄、ほのかな恋からの大きな愛、決意、そして世界の秘密とといろんなものがぎっしり詰まった濃厚なファンタジーでとても面白かったです。
ヘクトルとユリアの父娘、そして射手で元傭兵のトリスタンの絆がいいんですよねぇ……。マルティンの古代樹(のトリスタンの家)で穏やかに過ごすところが本当に良くて、もうずっとこういうの読んでいたい、でもこれほどほっこり心安らかになるシーンがあるということはこの後絶対落とされる、すごい落とされる、ジェットコースターになる……と若干ビビりながら読んでおりました。予想通りでした、まあせやろな……。ジェットコースターな展開はやられてばかりでもなくすかっとするところもあったのでストレスがたまるばっかりではなかったものの、古代樹の生活やら交易路の建設現場での穏やかな場面のことを考えるとつらい、とてもつらい。歴史として語られたユリアのその後については、物語として読みたいような、いやでもユリアの物語はここに語られるので十分でこれ以上は歴史としてその事実だけ語られる以上は読みたくないような、そんな相反する思いを抱えて読了しました。最後まで面白かったんだけどこの(いい意味での)もやもやは読書の醍醐味だなぁ。

全5巻予定の最初の1巻とのことで、今回は物語のすべてにつながるであろう始まりが起きたに過ぎない一冊だったのかも、というような展開でした。続きも楽しみー!(刊行済みの3巻まではぽちっと確保はしてる)

レーエンデ国物語
多崎礼
講談社(2023.06)
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