塩の街 / 有川浩

本の感想, 作者名 あ行有川浩

ある日、空から謎の塩の柱が地球にふってきた。そして、その日から人が「塩」になるという現象が勃発する。塩に着々と飲み込まれていく街と人の中で、元・女子高生の真奈は秋庭と二人で奇妙な共同生活を送っていた。


これで有川さんの既刊分(一応)コンプリートしました、のデビュー作「塩の街」のハードカバー版。文庫版に収録されていた本編を加筆修正した上で、後日談を収録。塩害により崩壊寸前に陥る世界の中で静かに暮らす真奈と秋庭の前に現れては消える人々。そして、二人の関係に変化が訪れたとき秋庭は塩に立ち向かう、という感じの珠玉のラブストーリーですよこれは。

正直な話文庫版は読むのをちょっとためらっていたのですが(まあ、なんというか、イラスト苦手……)、なんでためらっていたんでしょうと思わずにはいられない作品でした。実は読みながら本編のラスト近くまで今までの作品よりのめり込めなかったのは事実なのですが、後日談で盛り返しました。うーん、何でかなぁ。本編も十分面白かったんだけど、後日談の破壊力が群を抜いていたというか。デビュー作だから若干こなれないところがあったのでしょうかね。
世界なんてどうでもいい、と言い切ってしまうほど一途に秋庭に思いを寄せる真奈と秋庭の不器用な愛情表現がよかったです。そして、真奈を支える野坂夫妻も好きだなぁ。いろいろとお腹一杯で大満足です。

img塩の街
有川浩
ISBN:978-4-8402-3921-9-0
メディアワークス(2007.06)
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