翼の帰る処(上) / 妹尾ゆふ子

本の感想, お気に入り, 作者名 さ行妹尾ゆふ子

過去を見る力を持つ虚弱体質の尚書官ヤエトは、北嶺に左遷されたことをいいことに念願の「隠居」生活を夢見る。しかしヤエトのささやかな野望は、帝国に従属して日が浅い北嶺の面々との毎日のやりとりに奔走させられ遠ざかっていくばかり。その上、皇女が北嶺に太守として着任し、その皇女に更に振り回される日々を送る。


妹尾さんの新作は、隠居を夢見る虚弱なおじさん(に片足を突っ込んだ人)官吏が隠居の夢からどんどん遠ざかって、図らずとも帝国の歴史の秘密に気付いていくお話。うん、このまとめ方で間違ってない。徐々におもしろさが加速していくタイプのお話だと思いました。ひとまず、下巻が待ち遠しいです。

中間管理職はつらいね!とヤエトの心労がよく伝わってくるのが面白かったです。苦労人タイプのご苦労物語は外野から読んでいる分にはとても楽しいです。上からは姫様、下からは北嶺の人達とつつかれまくって大変です。なまじ優秀なだけにみんなヤエトのことを頼りまくっているのがこれまた。そしてヤエトもいろいろ文句をたれつつそれに最後までつきあっちゃうものだから始末に負えない。そして冗談じゃなく半死。今まで読んだ主人公の中で一二を争うくらい虚弱です。
ヤエトもよかったのですが、やっぱり姫様がいいなぁ。強気で勝ち気な姫様が自分の信念を信じて突き進んでいくところや、そんななかヤエトにぽろっと不安をこぼすところとか……、いやぁなんかいいわ。「野蛮人」と罵りながらも、姫様と北嶺の人々の距離が徐々に近づいていくことなんかも素敵。なんだかわくわくしてしまいます。

順調にいくかと思われた北嶺の統治も、皇妹の登場やらヤエトが気付いてしまった「歴史」で少々きな臭いものに?なってきています。ヤエトが気付きかけている秘密や、ひとところに「関係者」が集まっていることが何を意味するのか、そして皇帝の意図の謎など今月末の続きが楽しみ!

翼の帰る処(上)
妹尾ゆふ子/ことき
幻狼FANTASIA NOVELS(2008.10)
ISBN:978-4-344-81466-0
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妹尾さんのブログで感想用のエントリーがあるので、一念発起してTBしてみようかと。人生△回目のTB!