芙蓉千里 / 須賀しのぶ

本の感想, お気に入り, 作者名 さ行須賀しのぶ

育ての父親に置き去りにされ、生きるために女郎になることを決意したフミは人買いに連れられ、ハルビンの「酔芙蓉」にやってきた。「大陸一の女郎になる」と宣言したフミは、持ち前の機転の良さと機敏さと記憶力で思いもかけない自らの人生を切り開くことになる。

やっぱり須賀さんだ!おもしろい!という作品でした。

携帯サイトに連載されていた物語を単行本化した須賀さんの「大河少女小説」。男前なガッツを持ったフミ、フミと一緒に連れられてきたタエ、酔芙蓉の女将とねえさんたち、ととてもかっこいい女性陣の織り成す波瀾万丈の物語。
時代としては第一次世界大戦前とかそこらへんで、そういえばこの単語聞いたことあるわ、と知っていることも多かったので物語の置かれている状況等すんなり飲み込めたので読みやすかったです。

フミが野望に向かって突き進んでいく姿は格好良かったなぁ(彼女の最初の宣言を聞いて、「海○王に俺はなる」というとても有名なフレーズが脳内を駆けめぐりました)。やっぱり自分の力(とそして少々の運)で道を切り開いていく姿は読んでいて爽快です。ついでにフミの恋模様も思わぬ展開でした。最後の彼女の選択の場面ではどうなるんだろうととてもドキドキしました。個人的には黒谷とフミの持ちつ持たれつな関係がとても好きです。山村さんもフミの心を支えていたという点ではとても大きな存在というのは分かるんですが、黒谷さんの方がポジションとしてはおいしいと思います……。とりあえず一番ごろごろしたのはフミが黒谷へ啖呵切った場面でした……。あ、宣戦布告だからゴロゴロでもないか……。

そして、フミと一緒に売られてきたタエとフミとの友情もよかった。彼女がいつ夜叉になるのかと若干戦々恐々としながら読んでいたのも事実ですが、固い絆で結ばれた女の子同士の友情って好きだ。花開いたタエもきれいで格好良くて素敵でした。酔芙蓉のねえさんたちも、それぞれ芯が通ってびしっとかっこいい女性陣ばかりでした。ひっそりと酔芙蓉を去っていくねえさんがいる一方で、まさに壮絶としかいいようのない最期を迎えるねんさんも、とそれぞれのドラマがとても印象的でした。

第二部も連載開始予定とのことで、楽しみです。ジェットコースター人生っぽいフミの活躍が見られる?のでしょうか?

芙蓉千里
須賀しのぶ
角川書店(2009.07)
ISBN:978-4-04-873965-8
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