煌虹の末裔 / 紀佐弦

本の感想, 作者名 か行紀佐弦

女ったらしだが腕に自信のある元軍人の運び屋ライアは、ワケありの美女アリスとそのお供の狼ナギをアリスの両親の元に送り届ける仕事を請け負う。破格の報酬に美女との旅と浮かれていたライアだが、アリスを狙う

アリス命の狼兄弟がいいですね(基本です)。

レガロシリーズの単発?新作。全く存じ上げていない作者さんなんですが、これはきっとツボかも!(表紙の狼くんたちが)と思って読んでみました。かなり最初の方でアリスの種明かしされちゃうんで書いちゃいますが、貴重種の少女と、彼女をつけねらう研究者とかHenntaiさんから彼女を護りながら送り届ける仕事を請け負ったライアの冒険物語です。

この物語、設定がしっかりしていて、物語の背景や世界の成り立ちが語られるところでワクワクしました。(個人的な基準で)懲りすぎず、かといって薄くもなくちょうどいい具合でした。「昼」のアリスと「夜」のアリスに対するライアの態度の差もちょっと面白く、そしてそれを反省して真っ正面から向き合おうとするところもなかなかによかったです。女ったらしだけど。
そしてやはり特筆すべきは狼兄弟ナギとタツル。人型でも狼型でも基本的にアリスが好きすぎる事はよく分かりました。チートなほど強いのに、アリスのことしか見えてない……こういう盲目っぷりは好きです(基本)。チートといえば、味方側の登場人物がだいたい強すぎるので、ピンチになってもわりに安心して読めるというところもある意味安心要素かもしれません。

で、全体的には楽しめたんですが、いくつかむむむ、と思うところもありました。細かいところでは設定解説のところでちょっと目がすべってしまったのと、一番大きいのは「地の文」での混乱、かな。うまく説明できませんが、地の文での解説部分と登場人物の思考が入り交じっているというか……そのあたりがちょっとややこしくて、この子、ここまで知ってたんかいな(流れ的に知っていたらおかしいよな、と思うところがあった)、と何回か違和感感じてしまったのも事実で。このあたりがもっとすっきりするともっと純粋に物語を楽しめたのに違いないので、ちょっと残念です。

img煌虹の末裔
紀佐弦/榊空也
レガロ(2011.04)
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