鳳龍彩華伝 見知らぬ婚約者と初恋の庭 / 九月文

本の感想, 作者名 か行九月文

名門・江家の末娘ユァンは、刺繍の腕を極めて一握りの職人にしか与えられないという最高の称号を持つ<彩師>になるという夢を持っていた。しかしある日、ユァンは江家と並ぶ名門汐家の跡取り流星との婚約話があることを告げられる。流星はユァンの幼馴染みらしいのだが、彼女にはその記憶がなく、流星はユァンが思い出すことを待つというが……。

ベタぼれ流星さんがむずがゆかったわぁ(こういうの好きです)。

ビーンズ文庫で活躍されている九月さんのアイリスでの読み切り?(続けようと思えば続けられますが)のお話。神がかり的な刺繍の腕を持つユァンと、彼女にベタぼれな「幼馴染」流星のなんともにやにやっとしてしまう恋物語でした。ユァンと流星も良かったのですが、個人的にはユァンにベタ甘なお兄ちゃんたちが良いものでしたね!(こういうの好き)

自分の役割として嫁がなくてはいけないことは理解している、けれども刺繍を極めたいという二つの相対する思いに揺れるユァンと、幼い頃の想いをようやく遂げられそうなものの、ユァンを陰に日向に見守り助ける流星というこの二人のアレコレがとても良いものでした。掴みどころのない皇帝もなかなかおもしろかったですしねぇ。しかし、設定の幾つかが生かしきれていないかなぁ、というかちょっと消化不良感もあったかもしれません。特に、陰謀面は……そりゃもう(察しの悪い私でもわかる)あの人が!というのはあるんですが、何点かあかさずに終わっちゃったところがあって。この手の少女小説だったらだいたいそこら辺クリアにして終わっているような印象があるので、そのあたりもちょっともやっと。
しかし、もやっとしながらも全般的には好みのお話で、ぐいぐい読んでしまえたので楽しんでおりました。次回作も楽しみ!

鳳龍彩華伝 見知らぬ婚約者と初恋の庭
九月文/伊藤十明
一迅社アイリス文庫(2013.04)
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