佐和山物語 結びの水と誓いの儀式 / 九月文

本の感想, 作者名 か行九月文

嫁入り途中で時を遡ってしまったあこは、嫁ぎ先予定の井伊家にやっかになりつつも元に戻る方法を探していた。そんな折り、次期将軍秀忠の御成りが近づき準備に追われる井伊家。そして徳川の世を混乱におとしめようとする亡者の罠も張り巡らされ……

直継と小一郎のあこへの思いが切なすぎた。

関ヶ原の戦いのちょっと後の、鳥居家の姫と井伊家の当主の恋物語三冊目。この世ならざるモノとなった石田三成と大谷吉継の罠が直継と秀忠に襲いかかります。後半にいろんな事件が折り重なって、そして最後はそこで終わるの?ととても次巻が待ち遠しい展開でした。

前作でクローズアップされた、あこの嫁入りに付き添っているあこの幼なじみであり今回の嫁入り一行の責任者である小一郎。彼の主な出番は前回で終わりかと(勝手に)思ってたんですが、今回彼の抱えるあこへの想いと彼の背負うものの重さが語られ、とてもいい幼なじみっ(号泣)と心の涙が止まりませんでした。一方の直継は直継で、クールな仮面の下で明らかにあこのしめる場所が大きくなる一方で、いつかは「今ここにいるあこ」とは別れを覚悟しているという切ない想いがよかったです。

最初は「元の時間軸に戻ってもう一度であって、もう一度恋をして」という展開でいいんじゃないかな?と思ってたんですが、どうもそう簡単にことは運びそうにありません。どんな結末が用意されているか予想ができないのですが、今回の幕引きが結構えらいところで一区切り、なので続きも楽しみです。

佐和山物語 結びの水と誓いの儀式
九月文/久織ちまき
角川ビーンズ文庫(2009.10)
ISBN:978-4-04-454503-1
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