百花の守り主さま 一念発起の弟子入り志願! / あさば深雪

本の感想, 作者名 あ行あさば深雪

幼いころ母をなくし、血のつながりのないリリを引取り育ててくれた婆婆も亡くなってしまったリリは、一念発起して道士を目指して凄腕の道士ユーフェイが住まう福山宮に向かう。リリを追い払おうとするユーフェイに食らいつくリリは、なんとかしばらく修行をする許可を得たがユーフェイは鬼のような課題をリリに与える。そんな中、リリが育った街で疫鬼が発生したという知らせを聞き、リリは街に降りようとするが……

後ろ向きなヒーロに前向きなヒロインはよい取り合わせです。

第12回角川ビーンズ小説賞奨励賞受賞作品。今シーズンの新人さん本の中では一番最初に出ていたのに、うっかりチェックを失念していて一番最後に読みました。そして、たぶん一番好きかなぁというお話でした。受賞時のあらすじと比較する限りではだいぶ改作されていて、ヒーローポジションの人がオネエという設定が跡形もなくなっているのがヒッジョーに残念なのですが(ほらだってもしかすると本気になるとオネエモードの皮が剥がれるとかそういうギャップとかあるかもしれないじゃないですか)、まあ、これはこれで……。オネエも読みたかったですが……。

ヒロインが若干暴走気味なのですが、それをうまい具合に利用している兄弟子さんがしたたかで、でも憎めなくて面白いなぁと思いました。そしてそんなヒロインの暴走についつい心を動かされてしまうユーフェイさんの気苦労が……。諸事情でユーフェイさんは先が短い設定なのですが、ただでさえ短いのに更に削られそうで心配になる。リリちゃんの憧れが誰かはまだ本人には秘密(しかし読者含め周りの人間はみんなわかっているというこれまた美味しい展開)なので、このあたりの壮大な告白大会と、そしてリリに感化されて脱後ろ向きをした挙句に生きる決心をするという王道展開を期待したいところなので、続きも読むー。

百花の守り主さま 一念発起の弟子入り志願!
あさば深雪/明咲トウル
角川ビーンズ文庫(2014.10)
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