うたう鳥のよる~千夜一夜に巫女は舞う~ / 古戸マチコ

本の感想, 作者名 か行古戸マチコ

10歳くらいの体から成長しなくなってしまった18歳のシエラは、活版印刷にのめり込む父のお陰で火の車の家計を支えるため古書修復業の内職に勤しんでいた。ある日、ハレムに召し上げられて数日で行方不明になった従妹の行方を探すため、やる気のないランプの精の力を借りてハレムに潜入するシエラだが、ハレムにはシエラには理解できない様々な慣行があり……

アラビアンで巫女ものかーと思ったら、巫女はヒーローだった。

アラビアンなハレムでドロドロホラー!と思ったらわりとポップに進んでいく物語でした。ヒロイン・シエラが書記さんで詩オタク、ヒーロー・リヤーフが不思議ちゃんでヤンデレ気味でという、直球ではいかないポジションで面白かったです。一番のお気に入りはヘタレがおいしいファムとアランさんです。呪文のようにつぶやくあれやこれやがおもしろかったー。

詩が力を持つ世界で、なんでも願いが叶うという呪歌をハレムで探すことになったシエラに、シエラを運命として熱烈に歓迎する一方でハレムでは「ないもの」として扱われるリヤーフ。この二人を中心に、ランプの精と気のいいファムの4人が「宝探し」をしているところは和気あいあいとして楽しかったです。
少しずつシエラと交流していくことで、最後にはようやく自分の望みを持ったリヤーフの踏み出した一歩がなんだか好きで、読了感が良かったです。

うたう鳥のよる~千夜一夜に巫女は舞う~
古戸マチコ/柊暁生
一迅社アイリス文庫(2012.07)
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