神童マノリト、お前は廃墟に座する常春の王 / 仲村つばき

本の感想, お気に入り, 作者名 な行仲村つばき

三人の王が共同統治する国イルバスで、サミュエル王の王杖として初めての女性の王杖となったエスメは、隣国ニカヤで幼王マリノトの後見をしているベアトリス女王の下で女性の統治者としての在り方を学ぶことになる。災害や疫病、隣国との摩擦で国力が落ちているニカヤでは、イルバスの関与を快く思わないニカヤ人とベアトリスたちの陣営で軋轢が生じおり、マリノトも心を閉ざし言葉を発せなくなっていた。

クライマックスの準備はばっちりという感じの1冊でした。

シリーズ4冊目、イルバスの三人の王の王杖がそろい(前巻)、その中の一人で一番経験の少ないエスメが武者修行に行った先で国を揺るがす事件に対処するというお話。このシリーズだいたいいつも国を揺るがす事件が起きてますが、今回もなかなかに大きい事件が起こって、しかもこれは最終巻に片付くであろう陰謀の前哨戦というのが容赦ないなぁとほれぼれしてしまいました(ただし、仲村さんのお話はきつめでも最後はいい感じにきれいにまとまるからそういう意味では安心して読めるのはいいですね)。

サミュエルにも「効いた」エスメのまっすぐさが、ニカヤでもいい方向に作用していくところはあまり雲行きの良い展開ではなかったところでの救いでした。あとは、若干6歳(7歳)のマリノトまでもがわかっているのにエスメ本人は全く気付いていないサミュエルからの矢印……これはこの巻時点でサミュエルのおかれてる状況から考えて、エスメの猪突猛進振りでサミュエルの状況は次の巻でもちろん何とかなる展開が何となく見てるんですが(そしてそこはすごいピンチでもきっと楽しい)、最後の最後にサミュエルは報われるのかなぁ、と若干心配もしてしまいます。お兄ちゃんと弟は、(パートナー候補に対する)俺たちの戦いはこれからだ!で終わったりしないよな的な心配。
このお話は全体的に女性陣が強くて、男性陣(特に長男王と次男王)が残念感を漂わせながらも頼もしいところがあるのが面白いところでもあるんですが、最後の最後に最強っぽい女性が出てきて彼女の活躍も楽しみだなーと最終巻を読む楽しみが出てまいりました、読みます(いつも通り買うことは買って(略))

神童マノリト、お前は廃墟に座する常春の王
仲村つばき/藤ヶ咲
集英社オレンジ文庫(2022.01)
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