暁と黄昏の狭間I 竜魚の書 / 西魚リツコ

本の感想, 作者名 な行西魚リツコ

鍛冶職人の村の娘セフルは村の中で自分の居場所を見つけられず、息苦しい毎日を送っていた。しかし、水神フーレの化身に選ばれてしまったセフルは謎の病に苦しむ王太子メヒトルを救うために王城に向かうこととなる。メヒトルを救うには隣国の魔術大国オラに行く必要があり、セフルはメヒトル、そしてメヒトルを守る近衛騎士ギルダン・レイらとともにオラの大使が提供した疾風船に乗り込みオラに向かう。


キーワード→本格ファンタジー。オプション:騎士に憧れる少女

某所でオススメされていた骨太ファンタジー。本格ファンタジーの定義が私にはよく分かりませんが、ひとまず私基準では確実に骨太本格ファンタジー。王子を救うために否応なしに自分の身を犠牲にしなければならなくなった少女が国家規模の陰謀に巻き込まれていくお話です。少女小説ズキー的に見逃せない「オプション:騎士に憧れる少女」が本領を発揮するのは終盤の終盤で、しかもそこにたどり着くまでにはかなり泥臭いどっぷりとした展開があるので途中くじけるかもしれない……と思いながら読んでいたのですが、くじけることもなく最後まで楽しめました。
セフルは育った環境から、序盤よりかなりの終盤まで心に陰々滅々としたものが吹きすさんでいたんですが、きちんと丁寧に描写されていた上に納得のいくものだったので気にならず。わりに容赦のない展開で、ここ想像したら確実に私は夜寝られないというシーンもありましたがそこら辺もうまく右から左に流すことでクリア(もったいない読み方だが……苦手なものは仕方がない)。
人物模様も(あまり疑って読まないタイプなので)二転三転していくのに素直に驚きの連続でした。クライマックス近くは本気でどうなるか全く予想がつかなくて、手に汗握りました。
そして、恐ろしいことにこれはまだまだ物語のプロローグっぽいところ。ここまで大事件が起きてるのにゴロゴロはその一瞬!みたいな感じで(いやちがう、ゴロゴロ視点から見てもプロローグだけど本筋もまだまだプロローグだ)。いい調子で刊行されているようなので、続きも順次読んでいこうと思います。

あ、あと、ギルダン・レイ卿はとてもかっこいい騎士様でございます(とても大切なので忘れないように書いておきます)。本巻ではギルダンの内面があまり語られることがなくわりと謎な人だったのですが、次以降に期待してもいいかな……?

img暁と黄昏の狭間I 竜魚の書
西魚リツコ /D-SUZUKI
トクマ・ノベルズEdge(2008.02)
ISBN:978-4-19-850774-9
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