暁と黄昏の狭間III 角獣の書 / 西魚リツコ

本の感想, 作者名 な行西魚リツコ

ギルダン・レイがリヴォの軍人ケリードに身柄を拘束されていることを知ったセフルは、オラの生命魔術の学院を退学して彼に会うために一人旅立った。そして、ケリードと行動を共にするギルダン・レイはケリードの結成した”カルーガ”と呼ばれる偵察部隊の一員に加えられ、アミランテにおいて繰り広げられるオラとリヴォの全面戦争に否応なしに巻き込まれていく。


表紙にようやくギルダン・レイです!レイ卿はとてもかっこいいのです(ひとまず忘れないうちに言っておきたいと思います)。

オラを旅立つセフルとリヴォ軍に参加することになったギルダン・レイが敵味方に分かれつつもなんとか再会するお話。オラ対リヴォの全面戦争はとにかく派手でド迫力でした。魔術v.s.抗魔術です。ド派手です。そして十分すごい派手な戦争だなぁと思ってたら、最後の最後にアミランテ国王の持ち出したあの神獣……、もうわたしなにがあってもおどろかないよ!(棒読み)
オラとリヴォという二つの大国の間で弱小国が生き残っていく道のひとつを示したアミランテですが、これをヒントにレイ卿が今後どのように動くかがポイントとなるようですね。よく分からないケリードの真意もありますし、展開が読めません。祖国と同じ道をたどってほしくないという理由からケリードはレイ卿にいろいろ便宜を図っているのかなぁという気もしますが、この話そういう単純な「いい人」ってほとんど出てこないような気がしてまして……。

さて、国と国との大きな動きも気になるところですが、やはりここは少女と騎士。この二人のやりとりが中々に秀逸でシリアス展開の中でもニヤーっとしてしまいます。不謹慎ですいません。一緒にいる時間は短いのにこの密度の高いこと!離れていただけに、辛い目に遭ってぼろぼろになっていただけに余計にどしんとくるものがあります。
王子のために命を削らされそうになったり人質になったり見せ物になったり奴隷になったり、そして死にそうになった回数は数知れずとどこかのシリーズのヒロインに負けず劣らずジェットコースター人生のセフルです。普通は「ヒロインなのでまあなんとかなるかなぁ」と思わせるところがあってもいいと思うのですがこのシリーズは全くそういう安心感がありませんで……。いや、レイ卿と再会するに違いないから大丈夫というのはありはするのですが、どこまで辛い目に遭えばいいのかといろんな意味でヒヤヒヤしながら読んでいました。

さて、続きもとても楽しみなので(めまぐるしく変わりそうな勢力図とかいろんな人の暗躍とかニヤニヤ展開とか)続き続き。

img暁と黄昏の狭間III 角獣の書
西魚リツコ /D-SUZUKI
トクマ・ノベルズEdge(2008.04)
ISBN:978-4-19-850784-8
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