氷雪王の求婚 / 湊ようこ

本の感想, お気に入り, 作者名 ま行湊ようこ

地方貴族の娘アイリスは、氷雪王と呼ばれる皇帝エドリックの7番目の正妃として皇室に嫁ぐことになる。夫婦となったからには心を通わせたいと奮闘するアイリスであったが、エドリックは皇帝と皇妃の間に情は必要ないと取り合わないが、アイリスの猛攻にエドリックの態度は少しずつ軟化する。

これは、なんという……!(好きです)

だいぶ前から、colorfulのまろんさんによみなよーよみなよーとおすすめされていたコバルトのロマン大賞受賞作の新人さんのお話をようやく読みました。私が読む前から結構たくさんの人 [1]ただし、私の周囲のごくごく限られた範囲のおなじくかの人に転がされた人のこれはすごい!という感想を拝見しておりまして、大変期待して読んだんですがその期待通りのとても切なく、それでいて(少々)胸キュンなお話でした。

物語の要所要所にはさまれる「過去を回想するモノローグ」から、この物語が決してハッピーエンドではないことは分かっていましたが、それにしても!最後のあのクライマックスは本気で手に汗を握りました。確かに、ハッピーエンドではありませんでしたが、ラストの一筋の光に胸がいっぱいになりました。悲恋モノって苦手なんだけど、すれ違いから想いが通じて、途中ちゃんと幸せなひとときもあって、というちゃんと過程を踏んだのは好きだなぁ。

歴史書をひもとく形で語られるというのも結構好きなので、その点でもワクワクしながら読んでいました。歴史書文体の部分でちょっとこの言い回しは違和感かな?とか引っかかるところはありましたが、全体的に見ると些細な問題なので個人的にはOK。皇帝も(ばくちみたいに)有力者をあてにするだけじゃなくてちゃんと根回ししてればなぁ……などとちらちらと余計なモノもちらつきましたが、全体的にはすごく好みでしたので次回作も楽しみにしています。この続きなら、次の次の皇帝のお話が読んでみたい。

img湊よ氷雪王の求婚~春にとけゆくものの名は~
湊ようこ/由利子
集英社コバルト文庫(2010.11)
bk1/amazon

References

1 ただし、私の周囲のごくごく限られた範囲のおなじくかの人に転がされた人