紺碧のリアーナ(全3巻) / 久賀理世

本の感想, 作者名 か行久賀理世

幼いころの火事で両親を失ったリアーナは、父の友人のもとで家名を隠しひっそりと暮らしていたが、義兄が連れてきた「義兄の友人」の青年に危うく殺されかける。間一髪のところでリアーナを救ったアウレリオと名乗る青年に連れられ、メディチ家が支配するフィレンツェに戻ったリアーナは、自身の両親の死の真相がフィレンツェで繰り広げられる政争の鍵であることを知る。

史実と創作がうまい具合に練りこまれた少女小説でした。

昨年完結した英国マザーグース物語が非常に面白かったので同じ作者さんの文庫デビュー作を(今更)読んでみました。こちらは15世紀のイタリア・フィレンツェを舞台にした歴史少女小説もの。メディチ家に縁のあるものの、諸事情で幼いころにフィレンツェを離れていた女の子が、父親の仕事であった「メディチ家の密偵」として働くことになるお話です。あの時代のイタリアのごちゃごちゃした史実をベースにしているので、え、この国はどっち側なんだ!と何回か読みなおしたりしたのですが(いつもさらっと読んでるからなぁ……)、いい具合の「堅さ」と、ヒーローの「ヒロイン思考」が楽しいシリーズでした。一冊目に「花嫁」とでているものの嫁ものではなく、そして恋愛方面もそれほど強くなかったです(何しろヒーローが一番乙女だからな)。

1冊目はリアーナがフィレンツェに戻って密偵を始めるまで、2冊目は密偵としてメディチ家で起こった毒殺事件の真相を探り、そして3冊目は反メディチ家によるメディチ家の反乱の陰謀を阻止するためにミラノへ、ヴァチカンへ行くお話でした。1冊目・2冊目を読んでいた時は面白いけどもうちょっとパンチがほしいなぁと思っていたのですが、3冊目は物語のヒーローポジションの訳あり密偵仲間のアウレリオの秘密がぐぐいと物語に絡んできててすごく面白かったです。なんかいか行ったり来たりしましたが(イタリアの政情の把握が時々追いつかなくて、ね……!)。
一番お気に入りなのは空気を読まないレオくんでした。解剖!人体!と騒いでたのでもしかしたら超有名なあの人かな、と思ってたんですがそうでした。まー、そうだろう。そしてイヤーな憎まれ役かと思えば最後は美味しいポジションに収まっていたレナート君が大躍進でしたね。リアーナが持つ「家業を取り仕切るために自然と備わった魅力」の被害者であるだけかもしれないんだけど、何にせよ、よいものでした。

紺碧のリアーナ フロレンティアの花嫁
久賀理世/SHABON
集英社コバルト文庫(2010.06)
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紺碧のリアーナ 恋の仮面舞踏会
久賀理世/SHABON
集英社コバルト文庫(2010.10)
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紺碧のリアーナ 聖なる鐘は運命を告げる
久賀理世/SHABON
集英社コバルト文庫(2011.02)
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