鬼舞 見習い陰陽師とさばえなす神 / 瀬川貴次

本の感想, 作者名 さ行瀬川貴次

何者かに襲われた火の宮を救った道冬は、落ち着く間もなく女の童「冬路」として内裏の中宮の呼び出しに応じる。中宮たちに妙にもてなされた「冬路」は、中宮の女房のもとにご機嫌伺いに来ていた陰陽寮の先輩に図らずしも急接近してしまい、身元がバレる危機を何とか乗り越える。更に、火の宮の後見人初雁の御息所の要請を受けて火の宮の外出の護衛を仰せつかった道冬と吉昌は、外出先でトラブルに巻き込まれる。

大臣と綱の先祖子孫愛がネタを通り越してもはや様式美。

シリーズも佳境を迎えてきた一冊、かなー。このシリーズがこの黒幕を倒したところで幕を閉じるか、新章が始まるかはイマイチ把握しておりませんが、今までいろいろと暗躍してきた方々がようやく全員表に出てきたような展開の一冊。サブタイトル関係が最後の最後の数ページまで出てこなくてなんだろうって思っておりまして……面白いんだけど、今回は物理的に薄くて、刊行スペースを守るためか慌てて出した感は否めないかなー。面白いんだけどなぁ。なんだかつぎはぎを読んでいる心持ちになったのですが、これはこのヤマを超えたら最後は全部つながったように感じるのかな。

今回一番面白かったのは、大臣と綱の師弟愛とそれに対するツッコミ、次点は「冬路」殿の奮闘でした。「冬路」ちゃんと吉昌の後ろ姿にじゃっかんキュンとしてしまいまして、いいな~(性別間違っていない)こういう話読みたいなーと思ったのですが、あれだ、このシュチエーションで性別間違っていないのは「ひみつの陰陽師」だ。最近読んだ(笑)。

ちょい役だと思っていた少将様が思いの外物語に絡んできて、そしてその彼も結構辛い立場に立たされそうで(しかし事件の最後にはすごいかっこいいこと言ってすべてを受け入れてそうなんだけど)、道冬の謎の力と合わせてどうなるのかな、と続きも楽しみです。

鬼舞 見習い陰陽師とさばえなす神
瀬川貴次/星野和夏子
集英社コバルト文庫(2013.07)
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