茉莉花官吏伝 三 月下賢人、堂に垂せず & 四 良禽、茘枝を択んで棲む / 石田リンネ 

本の感想, お気に入り, 作者名 あ行石田リンネ

新人官吏の研修を終えた茉莉花は、慣例に従い地方へ赴任するが、地方赴任からそのまま隣国へ「研修」という名目で貸し出される。研修先の赤奏国は、現皇帝・暁月の即位に伴う混乱から立ち直っておらず荒れた状態が続いていた。暁月の即位を認めていない皇族による内乱の気配がくすぶる中、茉莉花は国の立て直しと和平交渉の窓口を担うことになる。

隣国で奮闘する茉莉花がたくましかった。

誰にも文句を言わせない成果を上げるために茉莉花に与えられた舞台は、未だ混乱が続く隣国でのお仕事。シリーズ3~4冊目は隣国・赤奏国での茉莉花の奮闘の物語でした。

即位時に助力を得た関係で珀陽に逆らえない暁月が、(前回珀陽に貸しを作った関係もあり)茉莉花を借り受けて国の立て直しを図るという構図。即位時のゴタゴタに伴い人材が流出してしまっている中、使えるものなら何でも使うという状況の暁月のもとで、官吏組織の再構築から和平交渉と獅子奮迅の働きをすることになる茉莉花が頼もしかったです。性別が不利になることもある中で、それを逆手に取って、誰もが覚悟していた戦を回避した茉莉花の作戦がぴったりはまって気持ち良かったです。

現政権に残った官吏で、有能ではあるもの目立たず地味に日々の仕事を無難に過ごす、という在りし日の茉莉花と々ような立ち位置にいた海成が、茉莉花に影響を受けて宰相への道を歩み始めるのも良かったなぁ。こういう「主人公に影響を受けて」というような展開がとても好きなのでよいものでした。暁月の指示で茉莉花の引き止め工作をやる気なく実行してるのも面白かったなぁ……その工作の妨害のために、課さられた宿題をこなしつつ行動を起こす天河も(はたから見れば)面白かったので、要所要所でこういうのを待ってましたというクスリとできるシーンがあるのもいい。

ばっさばっさと容赦ない暁月と、暁月に振り回される茉莉花というのも楽しかったのですが、その中でも暁月の幼妻(と表現すると語弊がある)の莉杏が聡明で可愛くていい癒やしだなー、最後の莉杏(と海成)からのご褒美がいい感じ!と大満足だったので、赤奏国編も落ち着いたところですし、スピンオフの暁月と莉杏のお話も楽しみです(次読む)。

茉莉花官吏伝 三 月下賢人、堂に垂せず
石田リンネ/Izumi
ビーズログ文庫(2018.4)
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茉莉花官吏伝 四 良禽、茘枝を択んで棲む
石田リンネ/Izumi
ビーズログ文庫(2018.8)
amazon/honto/BOOKWALKER】