ヴィクトリアン・ローズ・テイラー 恋のドレスと宵の明け星 / 青木祐子

本の感想, 作者名 あ行青木祐子

シャーロックとの「すれ違い」に混乱するクリスは、スランプに陥りドレスを作れなくなってしまう。消沈するクリスはロンドンの街で鉄道王の娘パトリシアと偶然再会し、彼女にならドレスを作れると決意するものの、パトリシアの恋の相手は依頼を断った上得意のご令嬢のお相手でもあるらしく……

ヒロインがクリスだと思った、けどやっぱりシャーリーも乙女全開だなぁ……

思いが通じ合ったものの、シャーロックとのすれ違いに調子をくずすクリス、一方のシャーロックは貴族としての義務を果たすべく日々邁進し、クリスの不調に気づいてやれず……ととてもすれ違いが切ないお話でした。そしてクリスの前に立ちはだかる公爵夫妻、はたしてクリスの運命やいかに!といろいろクリスに辛すぎる展開です。

このシリーズ、基本的に好きなんですがクリスのぐるぐる具合が結構読んでてきつく感じるので、元気な時でないと読めないなぁと改めて感じました。クリスの感じる不安や心配は理解できないこともないのだけど、今回はパメラやシャーリーの言い分の方がより理解できるので、ちょっとストレスがたまる展開。初めてのことで、そして幼少時の経験もありいろいろ自信をなくしてしまうとは分かってはいるのですが……。ずしりと重くのしかかる現実がこの先どうクリスにどんな試練を与えるのか、先が読めないのでとても怖いです。

といろいろ暗いことを考えがちですが、このシリーズの(ある意味の)癒しはシャーリーだなぁと思ってしまったりも。貴族特有の無神経さとか(それに翻弄されるクリスはかわいそうだけど)が妙に和む。シャーリーは現代に生きていたら、ロボコンとかに喜んで参加したり、ガンプラとか作ってそうだなぁとかいう失礼な印象を受けてしまいました。すいません。

恋のドレスと宵の明け星 ヴィクトリアン・ローズ・テイラー
青木祐子/あき
集英社コバルト文庫(2009.05)
ISBN:978-4-08-601287-4
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