シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精 / 三川みり

本の感想, お気に入り, 作者名 ま行三川みり

たったひとりの身寄りである母親を亡くしたアンは、母親のあとを継いで「銀砂糖師」になるべく都で行われる王家主催の砂糖菓子品評会に出場すべく旅に出る。品評会まで時間がないため、危険な街道を突っ切ることにしたアンは、妖精市場で口の悪すぎる戦士妖精のシャルを雇い入れる。アンに助けられて恩返しをすると息巻く妖精と、アンに求婚するおぼっちゃまジョナスという妙な道連れと共に都への道程をすすむアンは……

おとぎ話っぽい雰囲気を醸し出しつつぴりりとスパイスのきいた物語でした。面白かった!

第7回角川ビーンズ小説大賞審査員特別賞受賞作品。大賞にならなかったのは若干児童書っぽいところがあったから、という評をどこかで読んだことがあるんですが、確かにその通りでビーンズ色が薄い話だなぁと思いました。ビーンズ色って何ですかといわれると逆ハーとか絆祭しかでてこないんですが(略)。

と細かいところは置いておいて、とにかく努力するヒロイン・アンがとっても可愛かったです。人からすると若干ずれてる妖精達との掛け合いの面白いこと。おもしろさの大半は「恩返し妖精」の空回りに端をを発していますが、軽快なやりとりにムフフとしていました。アンが砂糖菓子を作るシーンもドキドキするくらい素敵で……ああ、満足。わりにまったり進むのかと思いきや、どしんとハードな展開に持って行ってのガチンコ勝負も良かったですね。悪役がへなちょこなので張り合いがなかったのですが、物語の雰囲気の中ではこんなもんかな、と思う程度なのであんまり気にならず。割とシビアな道程の割に悪役がへなちょこすぎるというのはちょっと気になるかもですが……。しかし、個人的にはアンの鉄拳制裁は平手じゃなくてグーが似合うように思います。

歩み寄ったシャルとアンの関係や、ヒューのこともあるのでこの先も続くのかなぁ、という気がしますが個人的にはこの話でだいぶ満足していたり。とても素敵な世界のお話だったので、また違う物語も読んでみたいなぁと思います。が、続きが出たらたぶんまた読む。

imgシュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精
三川みり/あき
角川ビーンズ文庫(2010.04)
ISBN:978-4-04-455077-3
bk1/amazon