龍ノ国幻想3 百鬼の号令 / 三川みり

本の感想三川みり

反封洲国主の長子・伴有間は約定を果たすために訪れた龍ノ原で、皇尊である日織と誼を結び祖国に戻ろうとしていた。有間を疎ましく思う国主の父と異母弟が有間を亡き者にしようとするなか、裏をかいて自領たどり着いた有間は、日織からの書状を手に、次の国主たる地位を継ぐのは自分であると宣言する。

有間の物語を軸に、日織側の物語の種まきも。

日織の盟友ともいえる有間が自国の国主の地位をめぐり、異母弟ときったはったをばっさりやりつつ、日織の周辺での不穏な動きがでてきて次も日織は大変な目に遭いそうだなぁというような、そんな下準備のお話でもありました。

幼い頃に罪人が送られるという「穴」に落とされ壮絶な経験をした有間と、有間と自国の国主の座をめぐり争う弟のだまし合いがメインで、今までの舞台の龍ノ原は「武器がない」世界だったのに対してこちらはその制約がないので、物騒な話でしたね……有間の生い立ちも関係するものの、矢以外にもいろんなものが飛んでました。世は戦国……物騒……作者さん少女小説出身なのに[1]※私は物騒な少女小説は好きです。すこし疑心暗鬼になってしまう展開でもあったので、いつ裏切り裏切られるのかというスリルも堪能できてしまう展開でした。

日織が有間に託した与理売の可愛らしさと頼もしさが物騒さを少々やわらげてはいたものの、そんな与理売の存在ですら利用する有間の冷酷さが、日織のやさしさというか甘さと対比されていて面白いなと感じました。

今巻で閑話休題的に語られた日織のおかれている状況から、退場したと思われた人がまたカムバックするというような展開になりそうな続きも楽しみ。

龍ノ国幻想3 百鬼の号令
三川みり
新潮文庫(2022/8)
amazon/honto/BOOKWALKER

References

1 ※私は物騒な少女小説は好きです