白の火焔―恋語り― / 青目京子

本の感想, 作者名 あ行青目京子

律家の惣領の一人娘である火焔は女だてらに武術をたしなみ、武士として内裏に務めていた。ある日、内裏で皇太子の綾白に出会い、彼の人柄に次第に惹かれていく火焔。大皇と対立する綾白が反乱を起こすという話を聞き、大皇の随身としての立場から綾白に付いていくことができない火焔は……


なんちゃって中世日本風若干ファンタジー風味で味付けの世界で繰り広げられる恋語りの第2巻は、前作で妖しげな色気を振りまいていた綾白と武家の娘の恋物語でした。前作のヒーロー左近はちょこちょこ活躍され、もちろん姫様もゲスト出演。二人の結末を知っているだけに、登場するだけで何となく嬉しくなってしまいます。それにしても、2ヶ月で次というのも早いですね。

敵方の立場にいてその上婚約者までいるのに、綾白に惹かれてしまって苦悩する火焔が切なかったです。しかし、武家の娘さんなので思い切りは大変よろしいですね。やっぱりこうでないと、という彼女の選択は、そこまでの過程が過程なだけに純粋に応援したくなりました。
そしてもう一方の皇太子は悩む火焔を尻目に、実は結構やりたい放題だなぁこいつと思わず突っ込みたくなりましたが、しかし節々にかっこよかったです。前作では何となくなよっとしている頭脳のイメージでしたが、そのイメージも完全に払拭されました。
そして、一番切なかったのは火焔の元婚約者・高峯ではないかと感じてしまいました。火焔が嫌うほど嫌な奴ではないと思うのですが、最後まで読むと彼に涙すること請け合い。いい人だ……。是非とも幸せになって頂きたいのですが、先ずは相手を捜さないと……。

今回は大皇の外道っぷりが前巻より際立っていなかったのです(これでも十分やな奴だけど)。もちろん腹の立つことしかしてくれないので綾白と火焔の幸せだけを願って読み進めていくことでできるのですが、思わぬ所に伏兵有りで最後まで気を抜くことができませんでした。まさか最後の最後にそうくるとは、と驚いてしまいましたが、でも、これもひとつのハッピーエンド、なのでしょうね。

個人的には前作の方が好きなんだけど、これもなかなかのお気に入りです。次回作は海賊ものらしいんですが、もしかしたら、前作で出てきた妙にかっこよかった商人のお姉さんが主役?

img白の火焔―恋語り―
青目京子/樹要(イラスト)
講談社X文庫WH(2007.09)
ISBN:978-4-06-255970-6
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