東方妖遊記 終わらぬ旅路と希望の扉 / 村田栞

本の感想村田栞

殷の王太子となった晄は仲間に支えられ国の復興に奔走していたが、ふとしたことでもう会えない汪李の事を思い出していた。久しぶりのまとまった休みに、舜の目を直すために崑崙に忍びこむことになった晄たちだが、崑崙の住人たちに追い掛け回されて……(『西王母の贈り物』)

化蛇がニートすぎて!

化蛇の王と鳴蛇の王の友情と、化蛇の王が炎招戈の使い手と契約を交わすまでの物語が2編と、本編終了後の崑崙でのドタバタ+感動の再会を描いた描きおろし、おまけの座談会の豪華な短篇集でした。陰の妖である化蛇の王がこれでもかという位引きこもりで後ろ向きで働きたくなくて傷つきやすく出不精なところとか、対をなす鳴蛇の王との絆の深さがとてもツボにはまりました。これはいい友情……!本編でもこの二人の対決のあたりはほろりときそうになったんですが、これを読んだ後にまたあのあたりを読み返すと本気で泣くぞこれ……。化蛇と鳴蛇の絆以外にも炎招戈の使い手と化蛇の王の契約に至るまでのお話もこれまた!こういうの大好きなので読めてよかったなぁと思います。

西王母様の「万能薬」を取りに行く顛末と、そして西王母様のお茶目なはからいの部分はドタバタかつほっこしりて、よい読了感でした。あんだけしんみりさせておいて、そしてあの渾身の告白でこのオチか!と突っ込みましたが、こういうオチ大好きなので問題ありません。楓牙王子も、たぶんきっと最後は報われたんだろうなぁ、と思える終わり方だったので色々満足です(でも最後まで一方的にいじられていますが)。次回作も楽しみですが、次は可愛いヒロインを!

東方妖遊記 終わらぬ旅路と希望の扉
村田栞/伊藤明十
角川ビーンズ文庫(2012.10)
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