伯爵と妖精 紅の騎士に願うならば / 谷瑞恵

本の感想, 作者名 た行谷瑞恵

母の故郷の島からリディアを探して、彼女の「婚約者」を名乗る青年がやってきた。彼のもたらすトラブルに巻き込まれ、巨人族にとらわれてしまったリディアは妖精界から逃げ出すため、チェンジリングで”リズ”としてエドガーの元に転がり込む。リディアと気づいてもらうために奮闘するリディアだが、エドガーの態度は素っ気なくなかなかうまくいかない。


前作の短編集で今後の大きな鍵になりそうだったリディア父と母の物語から直接つながった最新刊でした。巨人族の花嫁として妖精界にとらわれたリディアやレイヴンの奮闘と、エドガーのリディア以外の女性への意外な(そこはかとなく失礼)ストイックさがおもしろかったです。

リズとしてエドガーに果敢にアタックするリディアが知ったエドガーのリディアに対する思いと、リディアのためであればプリンスとしての力を使うことをためらわないエドガーというあたりは毎度のことながらよい感じですね。エドガーの進む道が非常に不吉なもので、この先どうなるのかなぁと心配になる一方で、リディアがいれば何とかなるかもという二人の絆の強さが素敵ですよね。第一巻を読んだときにはここまで相思相愛になるとは思ってもみませんでした。
母親の故郷からやってきたファーガスと妖精博士のパトリックの動きも気になるところ。ファーガスはあらすじから想像していたよりかなり好青年で今後結構いいことしてくれそうですが(違)、パトリックはどうもそれとは別のところで暗躍しそうな。この二人の今後の動向も見逃せません。

そして、毎度のエドガーとリディアのやりとり以上に素敵だったのはレイヴン。もうレイヴンに尽きます。過去の彼を振り返るとよくもまぁこんなに人間らしくなってと涙を禁じ得ません。エドガーの命令を聞かないために一生懸命あんなことをしてみたり、ニコとも「見捨てます」と即答しながらもきっちり友情をはぐくんでいって。エドガーとリディアの未来も気になりますが、それ以上にレイヴンとニコの友情の行方も非常に気になるところで次回を楽しみに待とうと思います。

伯爵と妖精 紳士の射止め方教えます

img伯爵と妖精 紅の騎士に願うならば
谷瑞恵/高星麻子(イラスト)
集英社コバルト文庫(2008.01)
ISBN:978-4-08-601111-2
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