竜宮奇恋譚―サンゴ畑でつかまえて― / 綾部いちい

本の感想, 作者名 あ行綾部いちい

漁師の父の仕事を手伝い漁に出た女子高生サワラは父に海に突き落とされるが、海ガメ型の奇妙な乗り物に乗った半年前に転校したはずの憧れのメバル君に助けられる。巨大なアコヤ貝の中にあるという「リュウグウ」に連れて行かれたサワラは、リュウグウを統治する「乙姫」の候補の一人だと告げられ、乙姫選抜試験を受けることになってしまう。


舞台はオーバーテクノロジーを利用した海底都市リュウグウ、ヒロイン・サワラのヒーローはメバル君、そしてライバルはヒメジにシラウオと海づくしのおもしろ物語(ただし時折ちょっとシリアス)でした。

サワラの今時の女の子らしいかわいらしさと肉への憧れからの乙姫選抜試験へのやる気のなさとそれに反する結果の連続がよかったです。サワラのボケは一級品だなぁ。タルト総会はちょっとツボにはまったかもしれません。サワラの片思い関係に関するドキドキ系はあんまりなかったので、そこら辺はもったいないかなぁ。ちょっと残念。

サブタイトル(サンゴ畑でつかまえて)にひどく心揺さぶられ(こういういかにもアホそう(注:ほめ言葉)なのは結構好き)ましたが、まあそんな感じのお話で。予想を裏切るあっと驚く展開とかそういうものはありませんでしたが、アホな(注:ほめ言葉)お笑い成分を楽しめるのであればそれなりにいけるのではないかと。
一部少しトラウマが思い起こされる点もありぞっとしましたが(サワラと同じくあの生物の集団だけはちょっと見たくない)、そこらへんは、なかったことに……。

きれいに完結していることは完結しているのだけど、続きもできそうな終わり方だったし、続くかもしれませんね。

img竜宮奇恋譚―サンゴ畑でつかまえて―
綾部いちい/タ・カーナ(イラスト)
B’s-LOG文庫(2008.2)
ISBN:978-4-7577-4016-7
bk1/amazon