翼の帰る処(下) / 妹尾ゆふ子
翼の帰る処の下巻。ヤエトの隠居の道は話が進むごとに遠くなり、そして死にかけまくって読者もはらはらです。皇女陣営側の人たちがみんな何のかんのとヤエトの世話を焼いているのがなんだかほほえましいです。やはり共通目的(ヤエトの世話)というものがあると人はまとまるものです(ちょっと違う)。登場人物のそれぞれのやりとりが本当に面白くて、シリアスシーン以外はへらへらとしまりのない顔をして読んでいたような気がします。
上巻でちりばめられた謎、古き時代の神の物語、そして皇位を巡る陰謀といろんなものが絡まり、ヤエトが皇女のためにがしがしと働きまくるお話でした。皇女のためにと一刻も早く北嶺に帰ろうとするヤエトの姿がかっこよかったです。
生き生きと元気な姫様の出番が中盤以降だったのでそこら辺はとても残念なんですが、しかしヤエトと姫様のコンビネーションがやっぱり素敵でニヤリとしてしまいます。恋とか愛とかそういうのではない、何ともいえない絆で結ばれているのがいいなぁ。これはもしや主従愛?(いやしかしその点はヤエトが否定してるしなぁ……)姫様を見てると放っておけないというのが一番のところだと思うのだけど。そして二人ともそっち方面(ラブ的な何か)はすっごく鈍感そうなのでそういう展開にはあんまり行かないような気もします。
そしてクライマックスのあたりの古の「契約」のところはぞくぞくするほどの展開で面白かったです。最後まで読むとこの「翼の帰る処」というタイトルになるほど、と感心することしきりでした。ああ、これはもう一度最初から通読せねば。
そしてうれしいことにシリーズ化が決定したようで!皇女の目指すもの、そしてヤエトの楽隠居の道は果たしていかにといろいろとても続きが気になりますので楽しみです。
翼の帰る処(下)
妹尾ゆふ子/ことき
幻狼Fantasia Novels(2008.11)
ISBN:978-4-344-81493-6
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