贅沢な身の上 ときめきの花咲く後宮へ / 我鳥彩子

本の感想, 作者名 や~わ行・他我鳥彩子

結婚話から逃げ趣味に生きるため、即位したばかりの皇帝の後宮に入ることにした豪商の娘・花蓮。当初の目論見通り、下位の妃として皇帝の目に触れることもなく、後宮で自由気ままに過ごしていた花蓮だが、皇帝の命が狙われているという噂を聞きつける。自由気ままな後宮生活を死守するためにも、事件の真相を探ろうと独自に調査を開始した花蓮は、同じく事件を追っていた皇城警吏官の典狼と出会う。

どうしよう、すごく面白い。

趣味と妄想に生きる女・花蓮が持ち前の行動力と妄想力で事件を解決していくお話(ラブもあるよ)というシリーズらしい第1巻。面白いというお話は聞いていたんですが、評判に違わずとても面白かったです。ただ、ものすごくコメディで(花蓮の存在それだけでコメディ……他の人は普通なのに)、中華風の後宮を舞台にしているにもかかわらずカタカナ語連発、語り口は軽いというノリのため、合わない人には全く合わないだろうなぁ、とも思いました。コメディだし、こんなもんかなぁと思っていたので、私はそんなに気にならなかったんですが。

後宮に入って「物語のような生活」を送るようになったにもかかわらず、あくまでも自分は傍観者、まわりの絵になるような人物は全員妄想のおかず!という花蓮の逞しさと妄想力が非常に面白かったです。恋愛小説の「様式美」を美味しくいただこうとする花蓮の信条は、同じような話をまさしく今楽しんでいる読者にとっていろいろうなずける面もあり、そのあたりも面白いんだろうなぁ、と思いました。そして、花蓮と出会い、毛色のかなり違う花蓮に興味をいだき、彼女に迫っていく典狼の涙ぐましい努力がこれまた笑えます。ただ、ヒーローのくせにかなり残念というかなんというかなので、次巻以降でカッコいいところがあればいいんですけどねぇ。

続きも楽しみだ。

img贅沢な身の上 ときめきの花咲く後宮へ
我鳥彩子/犀川夏生
集英社コバルト文庫(2012.06)
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