外面姫と月影の誓約 / 麻木琴加
ヴィスコンティ国の政務官試験に最年少で合格し、若手の出世有望株として期待されるエレーナは、そのほほ笑みを絶やさない姿から「鉄壁の笑顔」と呼ばれていた。そんな彼女に、問題が多発しているミモザ州に執政官として赴任することが命じられる。まだ年若いエレーナを派遣する交換条件として、同じく若手有望株のディノと二人で執政官としてミモザに赴くことになったエレーナだが、ディノには「本性」を見破られてしまった上に、「気に入った」発言までされてしまい……
才女というより体育会系だった。
第11回ビーンズ小説大賞奨励賞受賞作品。とある目的のために文官としての頂点を極めようとするエレーナちゃんと、なにかしらエレーナちゃんにかまってくるディノさん、そしてエレーナとディノをうまい具合に「腹心」にしようとしているんだろうなぁ、という食えない王子様ジェラルド様が印象的なお話でした。王子さまはただの当て馬かと思っていたんですがそんなことはなかった。王子さまが結構素敵。
思いの外不思議な力が暗躍する話で少々意外でしたが、話の展開は面白いし、もしかしてこうなのかな、こうなんだろうなーという彼と彼女の秘密にたどり着いた時はにやっとできて、全体的に楽しんだことは楽しんだんですが、細かいところがいろいろ気になって、物語に没入できなかったのはちょっと残念かなぁ。
一番大きなところは、帯(といいますか、あらすじ等)に書いてある「ちょっぴりドS」というところなんですが……。これ、ディノ君の説明なんですが彼のどこがドSなんだろうか……私の知らないうちにドSの定義は変貌を遂げたのでしょうか……。あとは、エレーナの優秀さが「才媛」というよりむしろ気合と気力と根性で乗り越えているとしか思えない描写ばかりでちょっと物足りない(笑)。エレーナさんとディノくんの「優秀な文官」設定が結構好きなので、おおおおっ!と思うような頭脳プレイを見てみたいあぁと思うのですが、次以降に期待なのかな?