廃墟の片隅で春の詩を歌え3 女王の鳥籠 / 仲村つばき
怒涛の最終巻でした。
シリーズ3冊目の最終巻、前巻が大層不穏な幕引きだったので今回はあそこからどこまで悪化するのかなぁと戦々恐々としながら読み始めたところ、どんどんどんどん悪い状況に転がって行って、これはこの一冊で無事終わるんだろうかと少しの不安を抱えながらの序盤から中盤でした。特に中盤入る前くらいのアデールとジルダ、そしてアデールとグレンに関しては、圧巻といいますか、こんな濃度の高いことを1冊(の中盤)に盛り込んでしまうなんてなんてもったいない!、と手に汗握りながら読み進めていました。グレンはアデールが好きすぎてこじれすぎて、のあの展開なので、もうちょっとこじれ具合が緩やかなら違う人生もあったのだろうけどと思いつつ、前巻後半くらいから株を下げまくっていたグレンも、下げるだけでなく持ち直してのあのシーンは感慨深いものがありました。持ち直して、よかった……。
腹をくくったアデールが彼女の始まりの地からの反撃の狼煙をあげた後半は、今までの暗雲立ち込める展開から一転して光明が見えはじめ、そしてこれまでの鬱憤を晴らすかのごとくすべてうまくはまっていくのはすっきりする流れで気分爽快。ここまでは一歩進んで三歩さがったり、アデールがやろうとすることが周囲の思惑から頓挫するということがひっきりなしに続いていたので、アデールの思惑通りに物事が進んでいくのが非常に気持ちいい。今までの、ややもするとストレスを感じる展開のおかげで爽快感が五割り増しくらいに感じていました。
最後の最後、アデールと、アデールに関係する二人の王杖の決着も最後は落ち着くべきところにきちんと落ち着いて、そしてアデールが幸せな一歩を踏み出せたようで、読了後は感無量でした。面白かった~!
(ネタバレ的なもの避けて書くとどうにもこうにも締まりのない感想になりますね、ということを実感した感想になってしまいました。難しい。)
廃墟の片隅で春の詩を歌え3 女王の鳥籠
仲村つばき/藤ヶ崎
集英社コバルト文庫(2020.04)
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