ヴィクトリアン・ローズ・テイラー あなたに眠る花の香 / 青木祐子

本の感想, 作者名 あ行青木祐子

リボンを愛するシャーロックの従妹・リルはリボン作製を依頼するために薔薇色にやってくる。失恋続きのジェインとその恋愛指南をする詩人のすれ違いだらけの恋の行方。見た目はいいけど薄情な舞台役者キースを追いかけるご令嬢の真意とは。何十年前かに街を出て、当時そのままの姿で帰ってきたまるで幽霊のような青年に恋をした少女。そして、クリスとパメラのロンドンでの出会いから旅立ちまでを描いた全5編を収録した短編集。


ヴィクトリアン・ローズ・テーラーの短編集。クリスとパメラの出会い編以外は本誌に収録されたものですね。書き下ろしの物語以外は全て読んだあとにふんわりと優しい気持ちになれる良いお話でした。シリアスなのもいいけれど、しんみりと良かったなぁと思えるこの雰囲気が大好きです。

この短編集の影の主役カップルはパメラとイアン先生に違いないと思えるくらい裏でいろいろとじれったいやりとりがあって、この点もすばらしかったです。イアン先生がんばれーと思わず無責任にエールを送ってしまいたくなるほど。特にキース登場物語でのイアン先生は頑張られましたねぇ。キース登場物語では本編の登場人物のその後がかいま見られてこちらも良かったです。
本編でも登場されているリル初登場の短編ではリルのかわいさにノックアウトされそうでした。彼女が出てくるだけで場の雰囲気が一気ににぎやかになるのはさすがですね。そして、小さくとも十分に立派なレディでした。

書き下ろしのクリスとパメラの物語は、一転してすこぶるシリアス。二人の出会とロンドンからの旅立ちまでがパメラ視点で描かれています。これを読んでから今の二人を見てみると、二人が出会えてそして一緒に旅立てて本当に良かったねと思わずにはいられませんでした。パメラからの過去はこれで判明しましたが、クリス視点での過去は本編で今後追々明かされていくのでしょう。

後書きには他の短編の構想もあるそうで、そちらも機会があれば読んでみたいなぁ。とくにシャーリーの寄宿学校物語なんてすごく読んでみたい……。

imgヴィクトリアン・ローズ・テーラー あなたに眠る花の香
青木祐子/あき(イラスト)
ISBN:978-4-08-601050-4
集英社コバルト文庫(2007/08)
bk1/amazon/boople