『スイートホームスイート』シリーズ / 佐々原史緒

本の感想, 作者名 さ行佐々原史緒

存在すら知らなかった母方の曾祖父の危篤に駆けつけるように、と高校を卒業式したばかりの戸丸一彦はあれよあれよという間に中欧の小国・レーゲンシュヴァンツに連行される。しかし、曾祖父の臨終には間に合わず、一彦の前に立ちはだかったのは一歳違いの武闘派「義理の曾祖母」アデルだった。一彦はこの小国の半分の土地を有するフリューゲルト家のただ一人の直系の血族であり、曾祖父の残した遺産の半分を相続しなければいけないというのだが、フリューゲルト家はとんでもない秘密を抱える公爵家だった。


曾祖父は人外魔境のお館様だった、という現代を舞台にしたホームコメディ(?)、『ホームスイートホーム』シリーズ全4冊を読みました。

1.世界で一番いらない遺産 : 屋敷付き妖精ピコリーかわいい。ナイスツッコミ。
2.ウィンナ・ワルツは憂鬱の調べ : ラストにびっくり。急にラブかラブ。
3.錯綜のフリューゲルト・レポート : ペラジーかわいい。やっぱりこの手のネタはロンドン。
4.世界で一番素敵な遺産 : 今までの教育がものをいう勘当の最終巻。ええ話や……。

という感じの感動のいい話、ホームスイートホームでした。
最初は訳の分からないことに巻き込まれて心底日本に帰りたいと思っていた一彦が、アデルや屋敷に住む妖精さんやなんやらとの距離が縮んでいくにつれてその生来の面倒見の良さというか人の良さを発揮し、フリューゲルトの一員としてトラブルに立ち向かっていく姿がよかったです。アデルはアデルで、妙な日本語(任侠ものの映画で覚えた広島弁)を操りフリューゲルトを守ろうとする面と、一彦と一緒に過ごすうちにだんだんと二人の距離が近づいていって……というお決まりながらもうれしはずかしの展開(注:ただし、元が元なのでいい雰囲気とかほとんど無い)がよかったですね。
他にも日本文化に妙に詳しいうさんくさい聖職者や(結構好きなタイプですが)、個性的な妖精さんや人外さんがおもしろくかわいく、特にピコリーのツッコミは一級品です。これを読むと佐々原さんの現代物のコメディの切れのすばらしさが際だっているような……気がします。

最初は世界で一番いらない遺産だったのに、最後には一番素敵な遺産になる物語。大変堪能させていただきました。
これ読んだらなんか中欧に行きたくなりましたー!旅行ー!非日常ー!(禁断症状発生中)

imgスイートホームスイート
佐々原史緒/カヅキレン
ファミ通文庫(2007.3)
ISBN:978-4-7577-3343-5
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