ミリセントと薔薇の約束 幽霊屋敷の優雅な執事 / 月本ナシオ

本の感想, 作者名 た行月本ナシオ

触れた物の過去が見えるという不思議な力を利用してディンセル公爵の『珍奇迷宮』で鑑定士として働くミリセント。ある日、彼女を迎えに来たという奇妙な馬車に連れられてたどり着いたのは不思議な幽霊屋敷。その幽霊屋敷の謎の執事にファネル家の後継者として迎えられたミリセントは、迎えに来る前に店で依頼を受けた曰く付きの「鏡」の鑑定からとんでもない事件に巻き込まれる。


ビーンズ文庫の今月の新シリーズは「幽霊屋敷・執事・いい感じのライバルっぽいお兄ちゃん」というキーワードが並ぶお話でした。元気なヒロインに謎の執事アンセル、そしてミリセントのライバルというか相棒というか偉そうだけどどこか憎めない伯爵家のご子息グレン君。ついでに終盤妙な存在感を示す王子様とその親衛隊。あー、私暑苦しい親衛隊好きかも……。

全体的に「おお、少女小説。地味に面白い(バカ売れすることはたぶんないタイプ)」という物語だと思うのですが、いかんせん地味なのがもったいないですね!派手にしようがないかもしれませんが。過去の記憶がない少女が実は名門の出だった、とかそこら辺お決まりだったりするのですがそういうのがいいときもありますよね。今回の一番の個人的ツボはグレン君と王子様だったりするのですが……グレン君のたぶんああなんだろうなぁという秘密が実は楽しみです。できの悪い贋作に腹を立ててぶっ壊すという何とも豪快なグレン君の性格が気に入りました。

デビュー作がどうにもこうにも合わないなぁと思っていた作者さんでしたが、新シリーズはちょっと好みかもということで思わぬ収穫。個人的にホラーというか怖いのがとても苦手なので、これくらいの感じの幽霊物なら安心して楽しめます。これ以上行くと無理だ(どれだけ苦手なんだというツッコミが入りそうだ)。今後もミリセントの不思議鑑定とグレン君の実力鑑定、そして裏でミリセントとグレンの仲を邪魔する執事という構図で進みそうです。

imgミリセントと薔薇の約束 幽霊屋敷の優雅な執事
月本ナシオ/椋本夏夜
角川ビーンズ文庫(2008.08)
ISBN:978-4-04-451109-8
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