侍ニーティ / みどうちん
「霊能力一家」だが自身はちょっと霊感が強いくらいのごく普通の女子高生・ミツコは父の仕事の関係で田舎のボロ屋敷に引っ越すことになった。引っ越し当日に家族全員が仕事でしばらく家を空けることになり、一人新しい家に臨む事になったミツコは、家の中で成仏しきれない侍幽霊・シシと対峙する。幽霊として働くことを拒否し、家の中で日々テレビ三昧を送るニート状態のシシに業を煮やしたミツコは、シシの成仏のために幽霊社会復帰を手助けすることにする。
ニートな幽霊……おもしろかった!
81ルルルドラマチック小説賞大賞受賞作のデビュー作。
ニートで幽霊とか、タイトルか、なんかすごくはっちゃけていて私に合わなかったらどうしようと思っていたら、各所でおもしろいおもしろいという感想を拝見しまして……たしかに凄く面白かった!これはお薦めです。
全般的にテンション高めなコメディなんですが、シシのニートっぷりがどこかで何か読んだことのある言い訳で、それがいちいち幽霊社会に置き換えられていてひとまず面白いです。この言語センスというか、変換センスがツボに来ました。「やりがいのある仕事」「歯車として動きたくない」「ブラック企業」を幽霊社会的に変換するとこうなのか。テンポのいい掛け合いが最後まで続くのかと思えば、中盤からややシリアス目にギアを変え、最後はなぜか感動物語になってるとか!この見事な切り替わりも面白かったなぁ。最後は見事に綺麗に収まって、よかったね、と微笑んでしまえるようなお話なのも素敵。
これはよい現代幽霊コメディでした。