いじわる令嬢のゆゆしき事情 灰かぶり姫の初恋 / 九江桜

本の感想, 作者名 か行九江桜

男爵家の長女イザベラは、まったく令嬢らしくない義妹アシュリーテを淑女に育てるために、日々手応えのないアシュリーテを相手に奮闘していた。そんなイザベラの言動は使用人を含め周囲に誤解され、「義妹をいじめる後妻の娘」という悪評が広がっていた。そんなある日、外国から戻ってきたイザベラの幼馴染フリッツがイザベラ達の滞在する別荘を訪ねてくる。長く外国にいた第二王子がお妃探しのために舞踏会を開くと聞いたイザベラは、フリッツの助けを借りてアシュリーテを舞踏会に送り込む準備をはじめるが……

イザベラの奮闘は楽しかったんですが……。

第14回角川ビーンズ小説大賞の奨励賞受賞作品。シンデレラストーリーを下敷きにした、義姉サイドのお話です。意地悪と言われている義姉ですが実はいじわるどころか世話好きなだけだった、という背景なのですが、正直なところ使用人がなぜ曲解しているのが本当に理解できなくて(舞台が本邸でなくてシーズン中だけの別邸だから、というのもあるかもしれませんが)、そのあたりに終始もやもやしていたら最後の方でそのもやもやがド級のもやもやになって着地しました。侍女ちゃん、あれはあかん……(そしてちゃんとそのあたりは始末つけたのでお父さん偉かった)。個人的には、「あーもうまたやってるよ、誤解されそうだけどいつもお嬢様も大変だなぁ」とかそういう見守りポジションの使用人のほうが楽しかったかも……大半の使用人がこういう理解度でも物語の進行は特段問題なかったはず、なんだけど。

自分に対する好意に無頓着なイザベラに押せ押せのフリッツ、謎の青年とこの辺りは少女小説的に面白いことは面白いんですが、この面白さよりもアシュリーテの人間としてのダメっぷりがどうも受け付けず、アシュリーテが事態を悪化させるあれこれが読むのが辛い。素材自体は(シンデレラが土台というのはありがちかもしれないんですが)面白いので、もうちょっと味付けがなんとかなったらもっと良いものになっただろうなぁ、と感じました。

いじわる令嬢のゆゆしき事情 灰かぶり姫の初恋 / 九江桜
角川ビーンズ文庫(2016.12)
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