飛べない鍵姫と解けない飛行士 その箱、開けるべからず / 山本瑤
天才錠前師トマスの養女として育てられたマージはトマス亡き後、店を継ぎ錠前師として独り立ちをする。そんな彼女の前に、鉄道事業で財をなしたアンブローズ伯爵家の若き当主アレックスが現れる。アレックスはマージに遺産相続に絡んだとある金庫を開けるための仕事を破格の報酬とともに提示してきて……
働く女の子と訳あり伯爵様のスチームパンク風味のコバルト文庫、良いものでした。
花やひらひらしたものより錆色、鋼鉄の鈍い輝きのほうが好きなマージの独特な感性が面白く、そんなマージを釣るためにマージの好みどストライクとなるよう色々と準備万端、こちらも規格外の伯爵アレックスのやり取りが楽しかったです。そして、アレックス弟でその生い立ちからひねくれた生意気なお子様になってしまったオリヴァー君がマージに手懐けられてしまうところもこれまたほっこりして良いものでした……。
相続関係のお話やあれやこれやは、あ、これはもしかしてあれだな!という少女小説的に予想の範囲内に落ち着く展開でこれはこれで安心して読める仕様で、コバルト文庫ってやっぱりいいなぁとしみじみ思った作品。錠前師というお仕事と、鉄道や飛行機や車が徐々に幅を効かせている時代感からほんのり湧き出るスチームパンク感も良いものでしたが、もうちょっとスチームパンク感があってもよかったかな。
飛べない鍵姫と解けない飛行士 その箱、開けるべからず
山本瑤/カズアキ
集英社コバルト文庫(2017.03)【amazon/honto/BOOKWALKER】