皇妃エリザベートのしくじり人生やりなおし / 江本マシメサ

本の感想, お気に入り, 作者名 あ行江本マシメサ

60歳で暗殺者の凶刃に倒れたエリザベートは、そのまま亡霊としてオーストリア帝国の終焉を見届け、そして気がつけば「エリザベート」としての2回目の人生を送ることになる。「前世」の知識をすべて持ち合わせているエリザベートは、不幸の始まりの皇帝フランツ・ヨーゼフとの結婚を回避すべく行動を起こす。

なかなかよいifものでありました。

エリザベートについては、ミュージカル(基本宝塚ですが、去年うっかり記念コンサートにも行ってしまった)とシェーンブルン宮殿の展示と、そしてテレビ番組等で取り扱っているくらいの(偏った)知識しか持っていないい、ミュージカルのエリザベートの楽曲はだいたいなんとなく歌える程度のオタクポジションなので多分これ楽しめるだろうと思ってましたけど、楽しめました。
ここのところ、ミュージカルのエリザベートを見ると、フランツはめちゃくちゃイケメンでかっこいいんですけど、(エリザベート攻略ゲームという観点から考えると)ことごとく選択肢を間違えてなんでーーーー、フランツ!と思ってしまうのですが、今回はその「エリザベート攻略という観点から見ると最悪の選択肢」をエリザベートの教育(笑)によりうまいこと回避していくフランツに、そうそうそれそれ!と違う意味でエールを送りながら読んでいました。色んなシーンでミュージカルのシーンが思い浮かんで(「パパみたいに」や「結婚の失敗」など)、ミュージカル派生小説かと思うくらいの展開が楽しかったです。

帝王学を身に着けてフランツとの結婚を回避する若干斜め上の発想での対応と、頑張ってエリザベートが回避ルートをとろうとすればするほどフランツに惚れられてしまうというもうこの二人運命だったからしょうがないわ、というロマンス部分も良かったです。ただ、歴史ものだしもうちょっと大河ロマンみたいなドラマティックさがあるのかな、と思っていたんですが、(他の江本さんの作品にも共通するのですが)さらっと淡々と進んでいくところにはちょっと物足りなさを感じました。このさっくりさが持ち味、というかある意味長所でもあるかもしれませんが。

ハッピーエンド好きとしては、好きなモチーフのifモノのこういうのまってましたという結末の物語が読めて楽しかったので、物足りなさもあるものの終わりよければ全て良し、です。

皇妃エリザベートのしくじり人生やりなおし
江本マシメサ/宵マチ
二見サラ文庫(2019.02)
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