身代わり伯爵の脱走 / 清家三森

本の感想, 作者名 さ行清家未森

ミレーユの存在が国外にばれてしまい、ジークから政略結婚をするか後宮に入るかの選択を迫られるミレーユ。そして、政争にミレーユを巻き込みたくないと考えるリヒャルトは、一人シアランに向かうことを決意する。ジークに軟禁されていたミレーユはリヒャルトを追い、思わぬ助っ人を得て王宮から抜け出すことに成功するのだが……。


身代わり伯爵第五巻でシアラン編の開幕編。国王の姪としてミレーユの存在が国外にばれてしまい、シアランよりミレーユを大公妃に迎えたという申し出。それを回避するにはジークの後宮に入るぐらいしか策がなく、というミレーユ大ピンチな幕開けでした。今回は(たぶん)人前でも読めるよ!という程度にの甘さでした。……いやしかし、ごろごろごろ~というのはなかったんですが、じんわりと来るのは、なかなかに。

いつもは存在感だけはあるけどそんなに活躍はなかったフレッド兄ちゃんとルーディー、そしてヴィルフリート王子がわりといいところをかっさらっていって新鮮でした。見せ場はあるというものの、やっぱりフレッドは倒錯的なところは常人には理解できないなんともコメントしがたいところがあります。さらりと決意表明はするものの、鏡の間だからなぁ。そして、ヴィルフリート王子がちょっと男前のところを見せましたがもう王子の付け入る隙はないという悲しい状況でもあったりします。王子にもよい嫁をぜひぜひ。

ミレーユとリヒャルトは、お互いがお互いを思いあっての追跡、身を引くだからかなり切ないものがあります。もう今すぐくっつけそこで、と思わなくもないですが、この最後の最後に行かないリヒャルトの心情もわかるだけに余計に切ない。
今まで事件に首を突っ込みはしていたものの蚊帳の外だったミレーユが、ついにリヒャルトの出自を知り、自発的にその渦の中に入っていくことになり、なんだかいろいろややこしそうな状況が今後続いていきそうです。

シリアス展開でも笑える展開は忘れずに、とのことなので、続きもめちゃくちゃたのしみです。ひとまず、ザビの短編は読もう。

img身代わり伯爵の脱走
清家三森/ねぎしきょうこ
角川ビーンズ文庫(2008.07)
ISBN:978-4-04-452405-0
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