これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~ 3 / 青木祐子

本の感想, 作者名 あ行青木祐子

広報部の人当たりの良い社員に相談されたり、ごまかすなら最後まで気付かれないようにごまかしてほしいというような経理伝票を巡るごたごたがあったり、謎のクリスマスツリー倒壊事件があったり、イレギュラーに振り回されたくないのにイレギュラーと遭遇してしまう森若さんは熱烈なアプローチをかけてくる営業部員との距離感の取り扱いに実は悩んでした。

ワクワクしたい森若さんが面白かった。

なんと7月末からNHKでドラマ化されるという本作、順調に電子の海に積んでいるのでこれを機会にちゃんと読んでおこうと思って発掘してまいりました。相変わらず冷静沈着、給料分以上の仕事はノーサンキューなイーブンたれの森若さんがかっこよかったです。ミステリーじゃないけど、これ私の中ではミステリー枠ですね。騙された!というお話もちょこちょこありました。

2巻ほどの事件は起きていませんが、それでも「うわ~すごいーこれは一緒に働きたくないー」というような足の引っ張り合いとか、女の人って怖いっていうところとか、いろいろと見たくないものと経理処理の不正の兆候を見つけてしまった森若さんが基本的には自分の職務の権限内で給料分の働きをしようという実は(森若さんが低テンションなので奮闘しているようには見えないものの)獅子奮闘する姿が面白い。そして、太陽さんからの熱烈アプローチにほだされて、冷静に自分の状況を分析し、わくわくしたいのにできない森若さんがちょっとかわいかった……振り回されたくないのに振り回されている森若さん、面白い。

もちろんフィクションではあるのですが、こういう小さいトラブルがいろいろとあるお仕事の話を読んでいると、現実世界でこういう話に巻き込まれなくてよかった(もしくは全く気付いていないのでこのまま気付かずに心穏やかに勤め人を終えたい)と思わずにはいられないお話でもあります。面白いんだけど、コンプライアンス的にこの会社ちゃんとガバナンス機能してるのか大丈夫かと毎回思う(笑)。そして「そ、それでいいのか……」と若干モヤモヤしてしまうお話が半分以上を占めるのでもうちょっとスカッとする話も読みたくなる(というのは前回の感想でも書いた)。

今巻の最後に経理部に超弩級のどぎつい新人さんが入ってこらたようで、彼女がどう話を引っ掻き回すのか今から楽しみです。キャラクターから考えて、新人さんが正義の鉄槌食らわしてスカッとするお話になるかもしれないなー、ならないか。

これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~ 3
青木 祐子
集英社オレンジ文庫(2017.10)
amazon/honto/BOOKWALKER