ヴァイオレット・エヴァーガーデン(上下巻) / 暁佳奈

本の感想, お気に入り, 作者名 あ行暁佳奈

依頼人の求めに応じ、訪問して代書サービスを提供する「自動手記人形」ヴァイオレット・エヴァーガーデン。戦時中は「主人」であるギルベルトとともに「戦闘兵器」として前線に立っていたヴァイオレットだが、終戦後はギルベルトの旧友ホッジンズの後見を受け、ホッジンズが立ち上げたC・H郵便局での業務に従していた。最後の戦闘で生死不明となっていたギルベルトの残した言葉の意味を探すヴァイオレットは、様々な依頼を受け、手紙を届け続けていた。

とても、とてもいいものだった……
(以下、本作と本作を原作としたアニメのネタバレを含む記述があります)

第5回京都アニメーション大賞 小説部門大賞受賞作で2018年に1クルーでアニメ化された作品。アニメは放映時に見ていたのですが、とてもおもしろい作品だったので原作も読まねば!となんとか手に入れた原作です[1] … Continue reading

アニメはヴァイオレットの成長を軸に、様々な依頼人との物語が紡がれているのに対して、小説ではヴァイオレットと関係する依頼人の視点からヴァイオレットが描かれており、視点が違って面白かったです。両方の作品に触れると、双方の視点から出来事を楽しめる、というような関係性。個人的には依頼者が面白いという点で好きなのは学者のお話で、手紙を出す、という観点から一番好きなのは一番最初の少女のお話。これはもう涙なしに語れない。

ヴァイオレットが驚異的な戦闘力を持つことについては、(アニメでは理由がよくわからなかったので)小説でその背景が明かされるのかなぁと思っていたんですが、小説でも特に解説はなされておらず(それどころか更に謎が深まった)、むしろアニメはアニメ向けに少し殺傷能力低くしているんじゃないか?というような状況で、もうこのあたりは「よくわからないけどすごい」でいいかな、というところに(私の中で)落ち着きました。

そして、私が小説に一番期待していたところは、ヴァイオレットが少佐と再会する、というところなんですよね……。これは是が非でも原作を読まねば、と思ったのはアニメと原作小説の差異についての多大なネタバレ(少佐が最後に大活躍)に触れてしまったというところが大きいんですが、このあたりの決着の付け方も、少女小説好きとして非常に非常い良いものでした、良いものでした……もう(上下巻の)カラーピンナップとか最高……。
ギルベルトのヴァイオレットへの想いの吐露については(というか親友へのノロケ。差し迫った状況で何やってるのか、ということは読み終わった後に気付いた)、むしろあなたがヒロイン、というような圧巻ぶりで良かったです(ヴァイオレットは人としての感情を勉強中のため、ボキャブラリーがどうしても不足しがち)。
めちゃくちゃこじれつつも仲のいい兄弟関係や、親友……(最高)というようなギルベルトとホッジンズの友情など、ああ、そういえばこの作者さん女の人だった(よくわかっていらっしゃる)、というような部分もあり、色んな部分がツボにグサグサ入ってきて総じて満足です。

2020年に公開されるアニメの劇場版は、原作小説とアニメの一番の違い(少佐の取扱)をアニメ解釈からきれいにエンドマークに持っていくお話と思うので、こちらもとても楽しみにしています[2] … Continue reading

ヴァイオレット・エヴァーガーデン(上)
暁佳奈/高瀬亜貴子
KAエスマ文庫(2015.12)
京アニショップ

ヴァイオレット・エヴァーガーデン(下)
暁佳奈/高瀬亜貴子
KAエスマ文庫(2016.12)
京アニショップ

References

1 KAエスマ文庫は流通経路が限られているため、オンライン書店での取扱は限られている(某密林ですごい値段がついてたりする)。地元の書店も特約店であることは確認できたものの、確実に手に入れたかったので、最終的には京アニショップの通販購入で確保した次第です。送料なんて安いもの……(現在の環境では、お金で解決できるものは解決することにしている)
2 全世界公開と書いてあるので、アメリカはもちろんですがアニメファンが多いフランスとかドイツまでは行くのかなぁ……。もう一声がんばってできれば海も渡ってほしい